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木葉井悦子『クロ てがみかこう』

 アフリカで生まれ小金井町で暮らしているイヌの「クロ」。もともとの飼い主(?)アフリカの「ムフおじさん」に、主人公の女の子「わたし」が「クロ」の1年間の様子を手紙に書くという物語。「クロ」と「わたし」の交流が四季折々の自然のなかで描かれており、その強いきずなが伝わってきます。

 絵はダイナミックで迫力があります。まずは表紙、「わたし」と「クロ」が背中合わせに座って笑っている画面がなんとも暖かな雰囲気。本文では、ドクダミの葉摘み、梅雨の雨、夏の川遊び、台風、大晦日の準備など、自然の風情が勢いのある筆致で描かれています。ラストページは赤いポスト。つまり、手紙を出すんですね。裏表紙の見返しには周辺の地図が描かれているのですが、「わたし」の家の隣に「おじいちゃん」の家があり、そこがとても自然豊かであることが分かります。

 はじめの方のページ、家の郵便受けをよく見ると「木葉井」と表札がかかっていました。もしかすると「クロ」は作者の木葉井さんが飼っている(飼っていた)実在のイヌなのかもしれません。

▼木葉井悦子『クロ てがみかこう』「こどものとも」1991年6月号(通巻423号)、福音館書店、1991年