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大人が絵本を読むこと

 ソラさんが開設されているウェブログ、skyward「子どものうちに絵本は読みたい」という記事を読みました。「大人受けを狙った絵の本」とそれを受容する人たちへの違和感を書かれていると思うのですが、ちょっとギクリ!としたところがあったので、かなり長くなりますが、引用します。

絵本は子どもだけのものじゃないとか、癒されるとか、絵本を読むと“忘れかけていた子どもの頃の純粋な気持ち”を思い出すとかって言う人が多いのにはほんと辟易。人それぞれ好き好きだから別にいいんだけど、絵本が心底好きで絵本を専攻してた私としてはそういうのがどうも気持ち悪い。

[中略]

最近になって思うのは、多分ね、大人になって、“絵本のすばらしさ再確認”みたいな人って、再確認も何も、子どもの頃にまともな絵本を与えてもらってないって人も結構多いんだろうなぁということ。絵本が本当に良いかどうかって、子どもの時期に読まないと分からんし(まぁ、絵本を良い悪いで括っていいのかどうかっていうのも微妙だけども)。

[中略]

絵本は子どもだけじゃなくて大人が読んでも十分感動するだの何だのってエラそうに言わんとって欲しいワ。当たり前のことだもの。本当に良い絵本は大人でも楽しめるなんて。しかも、大人向けの“絵本風に作った本”を、「大人でも絵本は楽しめる」という風に言われると何だかなぁ…あれはちゃんとした絵本を読めない大人用に“やさしく”作られたものだというのにね。あんなの子どもは読まないよ。子どもをなめてもらっちゃ困る。

 この記事を読んで思ったのは、もしかして私も「子どもの頃にまともな絵本を与えてもらってない」一人なのかなということが一つ。そして、「絵本のすばらしさ再確認」とか「絵本は大人が読んでも十分感動する」とか言っちゃいけないんだろうかという疑問が一つ。

 自分の子どものころを思い出してみると、絵本を読んでもらった楽しい記憶はありますが、そんなにたくさんではなかった気がします。少なくとも(ソラさんが書かれているように)「良い/悪い」絵本を区別できるほどは読んでこなかったと思います。で、自分の子どもができてから、あらためて「絵本はおもしろいな」と思い、このウェブログを作っています。

 この点からすると、私もまた、ソラさんに批判されてしまうかもしれませんね。

 ただ、私のばあい「絵本は子どもだけのものじゃない」とは思っていますが、絵本を読んで「癒される」とか「“忘れかけていた子どもの頃の純粋な気持ち”を思い出す」とかいったことは、あまりないです。

 私にとって絵本は、まずは子どもといっしょに楽しむものです。読み聞かせをして、子どもといっしょに笑ったり、しんみりしたり、おしゃべりしたりすることがおもしろいのです。そういうコミュニケーションの場を生み出してくれるのが絵本。

 そして、それだけじゃなく、私個人にとっても(つまり子どもとの関係を離れても)絵本はおもしろいと思っています。そのおもしろさは、たとえば、すばらしい映画や音楽や小説に接するのとまったく同じものです。一つの表現のジャンルとして絵本は非常に魅力的です。絵本のそういうおもしろさは、子どもの時期でないと分からないものではなく、大人になってから分かることもあり、子どもからお年寄りまで世代を問わず楽しめる(つまりそのよさが分かる)ものじゃないでしょうか。

 この後者の部分では、やはり「絵本は子どもだけのものじゃない」と言える気がしますし、そのことは、少なくとも世間一般では「当たり前のこと」にはなっていないと思うのですが、どうでしょう。「絵本は女性と子どものもの」みたいな先入観なり感性は相当に根強いと思います。

 ソラさんが違和感を持たれている「大人受けを狙った絵の本」にしても、じっさいそれを読んでいるのは若い世代の女性に限られるかもしれません。とはいえ、私はその種の本を読んだことがないのでよく分かりませんが。

 それはともかく、絵本がまだまだ社会的に認知されていないとするなら、たとえ「大人受けを狙った絵の本」であっても、絵本を知る一つのきっかけになるならいいのではないかと私は思いました。ソラさんが書かれているように、「大人受けを狙った絵の本」と「そうじゃない絵本」とが違うことを知り「ちゃんとした絵本」を読むことにつながっていくなら、それはそれでよいのではないかと。そんなにうまくいかないと言われそうですが……

 とりとめがなくなってきましたが、要するに、「癒されるとか言うな」「絵本は子どもだけのものじゃないなんて当たり前のことを言うな」と言われるのは、ちょっとしんどいということ。また、「絵本のよさは子どものときにしか分からない」「子どものときにまともな絵本を与えてもらっていないから、大人になってそんなことを言っている」というのも、絵本を知るせっかくの機会を閉ざすことにならないか、ということ。

 ソラさんにとっては当たり前のことばかり書き連ねているかもしれませんが、トラックバックしておきます。もし主旨をはずしているようだったら、すみません。