もと税金集めのお役人でいまは悠々自適に生活している「ラシーヌさん」、おいしい梨のなる庭の梨の木が自慢だったのですが、ある日、梨がきれいになくなっています。梨どろぼうをつかまえようと見張っていたところ、出会ったのが「ふしぎな動物」。この絵本では、「ラシーヌさん」とこの「ふしぎな動物」の交流が描かれていきます。
ちょうど仔牛くらいの大きさ。
遠くからみると、ボロ毛布の小山のようです。だらっと長い、くつしたみたいな耳が、目がついていそうもない顔の両がわで、パタパタしています。ごわごわのふといたてがみがはえていて、長い鼻を下にたらし、ふうふう息をしています。足は切り株みたいだし、ひざは乗馬ズボンみたいにだぶだぶ、うんともすんともいいません。
「ふしぎな動物」のあっと驚く正体は物語のラストで明らかになりますが、絵を見るかぎりではとにかく不気味。「ラシーヌさん」は楽しく付き合っているようですが、正直言って、あまり近くにいてほしくないタイプの動物です。でも、それがこの絵本のおもしろさですね。
あと、よく見ると、画面のあちこちに不穏なものがたくさん散りばめられています。実はスプラッター絵本かも。全体を通じて色遣いもなかなかエグいですし、ずぶずぶと深みにはまりそうなあやしい魅力に満ちています。原書の刊行は1971年。この絵本、おすすめです。
▼トミー・ウンゲラー/たむら りゅういち あそう くみ 訳『ラシーヌおじさんとふしぎな動物』評論社、1985年