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クリス・バン・オールスバーグ『ザスーラ』

 この『ザスーラ』は同じオールスバーグさんの絵本『ジュマンジ』の続編。両方とも以前一度図書館から借りて読んだのですが、もう一度読んでみたいといううちの子どものリクエストによりまた借りました。『ジュマンジ』はなかったので『ザスーラ』だけ。
 登場するのは「ウォルター」と「ダニー」の兄弟。公園で見つけたゲーム盤(日本の双六みたいなものかな)で遊びはじめると、ゲーム盤の上で起きている事柄が自分たちのまわりで現実になります。ゲームの内容は地球からザスーラ星まで行って戻ってくる宇宙旅行。二人の家は突然、宇宙に放り出され、流星群に突っ込んだり、ロボットに襲われたり、ゾーガン星人の海賊船に攻撃されたりと、たいへんな大冒険になります。
 訳者の金原さんも「あとがき」で書かれていますが、本当に黒一色のモノクロとは思えないほど、見開き2ページを丸ごと使った絵が迫力に満ちています。斜めになった構図や窓の外に広がる星空が宇宙空間を描写し、主人公二人の表情が危機また危機の連続を伝えています。SF映画のような物語ですが、静止した絵によって逆に想像力がかきたてられ、いわばダイナミズムが生まれている、そんな気がします。たとえばゾーガン星人は、天井の穴から降りようとしている爬虫類風の足としっぽだけが描かれているのですが、全部描かれていないからこそ、おそろしさが増していると思います。
 あと、物語のラストがとても印象的。けんかばかりしていた「ウォルター」と「ダニー」。二人のきずながある一つの言い間違いで表されています。一応のハッピーエンドなのですが、でも、私はあのあとの「ダニー」のことを考えると少し切なくなります。
 ところで、うちの子どもにとって、この絵本はだいぶ恐いらしく、読むとき絵本の画面を自分に近づけないでと頼まれました。読み終わったあとも一言、「少し恐かったねえ」。とはいえ、恐いんだけれどもう一度読みたくなる、そんな魅力があるようです。
 原書の刊行は2002年。この絵本、おすすめです。
▼クリス・バン・オールスバーグ/金原瑞人 訳『ザスーラ』ほるぷ出版、2003年