主人公はアリクイの男の子「アーサー」。この絵本では、「アーサー」のお母さんの「わたし」が語り手となり、5つの物語が語られています。どれも、ほほえましい親子のやりとりが描かれており、読んでいるとニコニコしてきます。
一番最初のページでは、お母さんが「ふだん」の「アーサー」を紹介するのですが、これがまた実に愛情にあふれています。なにせ「もんくなしに すばらしい むすこ」なのです。この辺り、私も非常によく分かります。いやまあ、要するに親ばかなんですね。
で、そんな素晴らしい「アーサー」も時々、「こまった子」になってしまう。その5つのエピソードが語られるのですが、「こまった」とはいっても、もちろん、かわいく愛らしいものです。うちで一番受けたのは、「アーサー」の食べ物の好き嫌いのこと。なにせ「アリクイ」ですから、人間の好き嫌いとは訳が違います。つい笑ってしまいます。
絵は、「アーサー」とお母さんの表情がよいです。二人ともあまり表情が変わらないのですが、会話のやりとりに応じて、微妙なニュアンスが描かれ、なかなかおもしろい。目元のちょっとした違いです。
唯一不満(?)なのは、この絵本では、お父さんがまったく登場しないことかな(^^;)。
原書”An Anteater Named Arthur”の刊行は1967年。
▼バーナード・ウィーバー/みはらいずみ 訳『アリクイのアーサー』のら書店、2001年、[印刷:精興社]