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デイヴィッド・ルーカス『カクレンボ・ジャクソン』

 主人公の「クレンボ・ジャクソン」はたいへんな恥ずかしがりや。目立つことが大嫌いで、ひっそりと暮らしていました。ところが、そんな「ジャクソン」が女王様のバースディ・パーティに招待され、着ていった服のせいで一気に目立ってしまうという物語。

 おもしろいのは、「ジャクソン」の恥ずかしがりやぶりを、まるで隠し絵のように描いているところ。服装の色合いや模様が背景の絵と同じように描かれ、見分けがつかないんですね。ページを開いたとき、一瞬「ジャクソン」がどこにいるのか分からなくなるくらいです。表紙からして、すでに背景に紛れています。タイトル通り、まさに「カクレンボ」。うちの子どもは、いろんなところに隠れている「ジャクソン」を探して楽しんでいました。主人公がこれだけ目立たない絵本も、珍しいかもしれません。

 で、その目立たない服装というのは、「ジャクソン」が自分の出かける場所に合わせてすべてハンドメイドで作ったもの。人目につかないために身につけたその能力が、最後には「ジャクソン」にスポットライトを当て、「ジャクソン」の人生を変えていきます。何であれ、卓越した才能は人びとに求められ評価されていく……そんな幸福な物語と言っていいかもしれません。

 それはともかく、この絵本ではいろいろな事物が装飾的に描かれ、しかもたいへんカラフルな色彩。なかなか楽しい雰囲気です。一つおもしろいなと思ったのは、多くの見開きページで中央が四角く縁取られ、そこから飛び出るようにして人や物が配置されている点。独特のダイナミズムが生まれていると思いました。

 あと、よく見ると、「ジャクソン」の顔がいつもは真っ白なのに、一カ所だけ、恥ずかしくて赤くなっているところがあります。なかなか可愛いです。

 読み終わって、うちの子どもの疑問は、「どうしてジャクソンはたくさんの宝石を持っているんだろう?」ということ。どれどれとページをめくって確認してみると、たしかに「ジャクソン」が服を作っている画面には、たくさんの布地とたくさんの宝石が描かれています。うちの子ども、よく見ています(親ばか^^;)。

 原書”Halibut Jackson”の刊行は2003年。この絵本は、作者のデイヴィッド・ルーカスさんが文章と絵をともに手がけた初めての絵本だそうです。

▼デイヴィッド・ルーカス/なかがわちひろ 訳『カクレンボ・ジャクソン』偕成社、2005年、[装丁:丸尾靖子]