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アストリッド・リンドグレーン/イングリッド・ヴァン・ニイマン『こんにちは、長くつ下のピッピ』

 有名な「長くつ下のピッピ」の物語。この絵本の原書は、なんと「長くつ下のピッピ」をスウェーデンではじめて絵本化したものだそうです。児童文学としての『長くつ下のピッピ』が刊行されたのは1945年。2年後の1947年にこの絵本が出版されています。

 実は私は「長くつ下のピッピ」を読むのは、これがはじめてだったんですが、かなり楽しめました。物語はもちろんですが、絵がまた魅力的です。まるでピッピの生きるエネルギーがそのまま定着したかのような明るく鮮やかな色彩。そして、どの画面にも飛び跳ねるような勢いがあります。多くの画面で「ピッピ」たちのアクションがいわばストップモーションで切り取られており、それが軽やかさと楽しさを生んでいると思います。

 うちの子どもは「ピッピ」が何でも自分でやることに感心していました。とくにパンケーキを焼いているところでは、「すごいねえ」と心から感嘆。サーカスで「ピッピ」と力比べをする「怪力アドルフ」のパンツにも大受けでした。曰く「ぽよぽよのパンツだねー」。この絵本、相当おもしろかったようです(^^;)。

 思ったのですが、「ピッピ」は子どもにとって一つの理想の姿かもしれませんね。お父さんもお母さんもいないから、いつでも、したいことができるし、しかも生活力は完璧で、何でも自分でやってしまう。加えて、怪力でお金持ち。いやはや、文字通り「世界一強い女の子」です。

 あえて弱点を挙げるなら、学校に行ってないから字を書くのが苦手なところかな。でも、「ピッピ」ののびのびとした開放的な様子を見てると、字が書けないなんて、たいしたことではない気がしてきます。「生きる力」というのが、しばらく前まで日本の初等教育のキーワードになっていましたが、「ピッピ」こそ、「生きる力」の体現者じゃないかな。

 それはともかく、「訳者あとがき」には、刊行当時の状況や、挿絵を担当したイングリッド・ヴァン・ニイマンさんとアストリッド・リンドグレーンさんの交流などが記されていました。こちらも興味深いです。

 あと、この絵本、巻末には「長くつ下のピッピとニルソン氏のきせかえ人形」という厚紙が付いており、「ピッピ」と「ニルソン氏」の姿や衣装を切り抜いて遊べるようになっています。うちの子どもは、紙を使って工作するのが好きなので、この付録にもかなり心惹かれていました(^^;)。

 原書、”KANNER DU PIPPI LANGSTRUMP?”(スウェーデン語の綴り記号が付くので正確ではありません)の刊行は1947年。

▼アストリッド・リンドグレーン 作/イングリッド・ヴァン・ニイマン 絵/石井登志子 訳『こんにちは、長くつ下のピッピ』徳間書店、2004年、[カバーデザイン:鈴木ひろみ、カバーフォーマット:前田浩志・横濱順美]