かこさとし『かいぞく・がいこつ・かいぶつじま』

 うーむ、これは、すごい。タイトルにも示唆されるとおり、海を舞台にした海賊物語。海賊はもちろん、それ以外にも、かなりワルい人たちが登場します。

 何より驚いたのが、物語の結末。まったく予想を裏切った、まさに驚きのオチです。物語の定石を意識的にはずしていると言っていいかもしれません。

 ある意味、急転直下のカタストロフィ。誰も救われず、あとには青い海だけが残る……。ちょっとびっくりしますが、このストーリー展開、私はポジティヴな意味でかなりおもしろいと思いました。

 物語のみならず、絵のタッチも、かこさとしさんの他の絵本とはだいぶ違った印象。荒々しいところが若干あります。それは、見知らぬ場所に連れて行ってしまう、この絵本の物語によく合っていると思います。

 あとがきには次のように記されていました。

恐ろしくない厳しさ、楽しさを伴ったけわしい関係が少しでもお伝えできれば幸いです。

 なんとなくですが、ときとして不条理な自然の猛威、人間の浅知恵なんぞ簡単に凌駕してしまう自然の力がここには描かれているのかもしれません。

 あと、後日もう一度読んでいて気が付いたのですが、タイトルにも含まれている「かいぶつ」、実は前半の絵のなかにも隠れているんですね。よーく見ると、島の形が微妙に「かいぶつ」です。

 ところで、この絵本は、「かこさとし 七色のおはなしえほん」シリーズの1冊。カバーの説明によると、シリーズの絵本はそれぞれ、白、茶、藤、黒、赤、黄、青の七色のうち一色を基調にしているとのこと。それぞれ、「おもしろ絵本」「おもちゃ絵本」「おもあか絵本」と呼ぶそうです。

 で、『かいぞく・がいこつ・かいぶつじま』は「おもあお絵本」。たしかに、海の青を基本色にして、部分的に鮮やかな黄が使われています。この色の対比はなかなか印象的。

▼かこさとし『かいぞく・がいこつ・かいぶつじま』偕成社、1985年、[表紙・カバーデザイン:ヒロ工房、印刷:小宮山印刷、製本:サン・ブック]

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