タイトルの通り、「はなくそ」をモチーフにした絵本。家族みんなで大受け、大爆笑しました。うちの子どもは、途中からずーっと笑いっぱなし。いやー、これはおもしろい!
主人公はブタの男の子「ジュール」。「ジュール」は家がお隣で毎朝いっしょに学校に行くの女の子「ジュリー」が大好きなのですが、なかなか告白できません。「ジュリー」はといえば、「いつも よごれて はえが ブンブンしている ジュールが いやで たまりませんでした」。
そんなある朝、「ジュール」が勇気をふりしぼって、ついに愛を告げようとすると、「ジュリー」曰く「わたしね、あした ひっこすの」。驚く「ジュール」はだまって「ジュリー」のあとを付いていくだけ。森を歩く二人はそのうち、大きな恐ろしいオオカミに捕まり、牢屋に閉じこめられてしまいます。食べられそうになった「ジュリー」を救うべく「ジュール」が取った行動とは……。
このあとの展開は、ぜひ読んでみて下さい。大爆笑間違いなし、開放感あふれるビロウな物語です。
まあ、汚いと言えば汚いお話。しかも、教育上あまりよろしくないかもしれません(^^;)。「そんなことしちゃいけません!」なんて言われて眉をひそめられそうです。
でも、子どもはもちろんのこと、大人になっても、こういう汚いものを楽しむ感覚ってありますね。ついつい、いろんなものの臭いを嗅いでしまうとかね。だって、楽しいもんなー。
それに、この絵本、単にばっちいだけではないような気がします。主人公の「ジュール」は、前半のページではたしかに汚くて何も考えていなさそうなんですが、どうしてどうして、オオカミの様子をよく観察し、実に的確な判断を下しています。その場の状況に臨機応変に対応し、しかも最後には「ジュリー」の愛まで勝ち取ってしまうのです。実はとても聡明な男の子なのかも(^^;)。
絵はもちろんユーモラス。「ジュール」の汚さ具合の描写がよい感じです。頭の上にはいつもハエが一匹飛んでいるのですが、最後の最後にいなくなっているのも、おもしろい。「ジュール」の汚さに降参するオオカミの変化も、見ものです。
あと、付けられた文章も秀逸。「ジュール」の一挙一動とそれに対するオオカミの反応が、まるで映画を見ているかのように伝わってきます。ばっちいアクションの連続には、なんともいえないおかしみがあります。
ともあれ、家族みんなでこれだけ大笑いした絵本は、ちょっと珍しいかも。汚いのは嫌いという人には向きませんが、そうでなければ、おすすめです。
原書”Crotte de nez”の刊行は2000年。
▼アラン・メッツ/伏見操 訳『はなくそ』パロル舎、2002年