今日は3冊。ある雨の木曜日、窓の外にドラゴンが見えるようになった「ジョージ」。それからというもの、まちのあちこちにドラゴンを見つけます。いたずらばかりしているドラゴンをなんとかしようと、大きな空飛ぶドラゴンの機械、「ドラゴンマシーン」を作り、「だれも行ったことがない荒野の果て」、ドラゴンの楽園へとドラゴンたちを連れていきます。この絵本、絵はたいへん幻想的で美しく、「ドラゴンマシーン」の目のなかで身体を丸めて眠る「ジョージ」を描いた表紙も印象的。登場するドラゴンたちは、恐いというよりはおちゃめでユーモラス。そして「ドラゴンマシーン」が実にメカニカルでかっこよいです。うちの子どもも気に入っていました。この絵本は、物語もまたいろいろと考えさせます。大人たちには見えないドラゴンは、うち捨てられた子どもたちのメタファーであり、ジョージもその一人であることが示唆されています。
でも、だれもドラゴンに気づいていません。
きちんと見ていないから見えないのです。
気にかけていないと目にもとまらないのです。きっと。
(それって、だれもジョージのことをきちんと見てくれないし、
気にもかけてくれないのに似ているかも)
じっさい、この文の付けられた画面で「ジョージ」は、大人たちが足早に通り過ぎる道ばたで、どことなく薄くいまにも消え入りそうに描かれています。そんなに強い主張ではありませんし、ラストは一応ハッピーエンドなのですが、重層的なメッセージが感じ取れます。原書の刊行は2003年。この絵本、おすすめです。
▼ヘレン・ウォード 作/ウエイン・アンダースン 絵/岡田淳 訳『ドラゴンマシーン』BL出版、2004年