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青森市がブックスタート事業をスタート

 陸奥新報、8月30日付けの記事、陸奥新報WWW-NEWS:絵本楽しみ親子で触れ合い 青森市が子育て事業。青森市で、今年度、4歳児検診時に絵本を手渡す「ブックスタート事業」を始めたそうです。4歳児検診のときに渡すので、実質的には4月以降に生まれた赤ちゃんが4ヶ月になる8月にスタートとのこと。

 ただ絵本を手渡すだけでなく、赤ちゃんとの向き合いを伝えたり、図書館が赤ちゃんの名前で図書カードを発行したりしているそうです。写真が掲載されていましたが、絵本のほかにお薦めブックリストや子育て相談窓口情報を載せたパンフレットが入った「ブックスタート・パック」というセットを渡しているんですね。これは、いろいろ役立ちそうです。

 保健所だけでなく、図書館や読み聞かせのボランティアグループも連繋しているのは、とても充実していて良いんじゃないかと思います。横のネットワークがあるのは、子育て支援という意味でも大事なポイントかもしれません。

 ブックスタートについては、特定非営利活動法人ブックスタートが、活発に活動していますね。ウェブサイトは、特定非営利活動法人 ブックスタート。サイトの説明によると、2005年3月31日時点で、全国653の自治体でブックスタートが実施されているそうです。全国の市町村数は2544なので、約4分の1の市町村が実施していることになります。すごいですね。

 青森市の「ブックスタート・パック」も、この特定非営利活動法人ブックスタートのものを活用しているようです。ブックスタート・パックに紹介がありました。

マタニティ・ブックスタート(続)

 先日、書いた記事、絵本を知る: マタニティ・ブックスタートに、YuzYuzさんからトラックバックをもらいました。YuzYuz | マタニティ・ブックスタートです。

 yuz さんの記事では、赤ちゃんが絵本に接することそれ自体、したがってブックスタートそれ自体に私が懐疑的と書かれているように読めました。でも、先の記事で私が考えていたのは、そういうことではありませんでした。私の書き方が言葉足らずだったなと少し反省しています。そこで、いろいろ補足しながら、もう一度、自分の考えをまとめてみたいと思います。うまくいかないかもしれませんが……。以下、かなり長文です。

 まず、私は、たとえばゼロ歳児の赤ちゃんが絵本に接することそれ自体に懐疑的・否定的なわけではありません。むしろ、逆です。絵本を破ったり、なめたり、遊び道具にしたり、また最後まで読まなくても、父親や母親と一緒に赤ちゃんが絵本に接するのはよいことと思っています。

 じっさい、うちの下の子どもは現在1歳ですが、ゼロ歳児のときから絵本を読んでいます。もちろん、遊び道具になることが多いですし、読んでいる途中で飽きてしまったり、放り出したりしていました(実は先々週くらいから最後まで楽しんで読むようになりました。これについてはまた別の記事で書きたいと思っています)。

 でも、「だからダメだ」などとは私は考えませんでした。当人が楽しそうにしていましたし、私自身も子どもと一緒に楽しむことができたからです。繰り返しになりますが、「絵本は最後のページまで読まないとダメ」とか「絵本で遊んではダメ」とは私は考えていません。ちなみに、このことは、現在5歳の上の子どものときも同様でした。

 というわけで、yuz さんが下記のように書かれていることに、私はまったく同意見です。

ブックスタートで重要なのは、あくまでも本を通した触れ合いの時間を取ることであって、絵本を読ませることではないからです。
・赤ちゃんを抱っこして、声をかけて上げること。
・触れ合った場所から、保護者の方の声が直接届くこと。
こういう触れ合いの機会の一つの手段として「絵本を読」んでいるのではないでしょうか。
また、一冊を通して読む必要もありません。
私がブックスタート事業に関わっていた時には
「赤ちゃんのご機嫌の良い時に読んであげてくださいね」などの声かけも行っていました。
赤ちゃんが飽きちゃったら、絵本が途中でもおしまいにしてしまいます。
でも結構赤ちゃんも興味を持って見てくれるものですよ。

 私も、赤ちゃんにとって「絵本としての認識」が必要とは考えていません。というか、そもそも、それは無理な話であって、そういう認識がないのは当たり前と思っています。

 ですので、私の記事で yuz さんが引用されている次の箇所は、(少なくとも私の意識では)何かネガティヴな含意を込めて書いたわけではありません。

 とはいえ、生まれてしばらくの赤ちゃんに絵本を読んでも、おそらく赤ちゃんは絵本を受け入れないのではないでしょうか。少し大きくなってからも遊び道具にすることが多いと思います。そもそも絵本が「絵本」として認知されるのは、それなりに条件が整わないと難しい気がします。

 いまになって読んでみると、「絵本を受け入れない」という一文は表現が強すぎるなと思います。これは筆(というかキーボード)が滑ってしまいました。とはいえ、上記の箇所は、ネガティヴな評価もポジティヴな評価もなく、事実としてこうなんじゃないかと自分が思ったことを書いたつもりでした。

 では、マタニティ・ブックスタートの何に対して私が疑問を持っていたのかと言えば、上記の箇所のすぐあとで書いた点です。くどくなって恐縮ですが、引用します。

 そうだとすれば、親が期待するほどには赤ちゃんが絵本を楽しんでくれないとき、逆に絵本なんていらないということになりはしないか……。考えすぎかもしれませんが、絵本とのかかわり方が阻害されることもありうるように思いました。もちろん、このあたりについては、事前にきちんと伝えておけばよいのでしょうが……。

 あと、この取り組みがある種の方向に進んでいくと、たとえば「胎教によい絵本の読み聞かせ」とか「胎教におすすめの絵本」といったところまで行くかもしれませんね。最近は絵本ブームと言われていますし、もしかすると、どこかの出版社がすでに企画を立てているかも。たぶん出版社にとっては新しい市場になるような気がします。

 上記で私は、二つのことを考えていました。

 一つは、赤ちゃんと絵本に関する、親の側の理解が行き届くかどうかという問題です。つまり、母親や父親が赤ちゃんに絵本を読むとき、たとえば「最後まで読まないといけない」「絵本をおもちゃにしてはいけない」といったふうに考えて、無理に読ませたりしないかどうか……。赤ちゃんにとって絵本は遊び道具でまったくかまわないし、最後まで読む必要もなく、ふれ合いの時間が大事なんだということ、このことを親の側がちゃんと理解できるようになっているかどうか、です。

 yuz さんも少し触れられていますが、それが「絵本」であるがゆえに、早期教育として捉えられる部分も根強いんじゃないかと考えました。親の側からすれば、せっかく絵本を赤ちゃんに読むんだから、英語絵本を読もうとか、きちんと最後まで読んで言葉を早く覚えさせたいとか、繊細な絵に触れさせて美的な感覚を身につけさせたいとか、そういう意識がどうしても入ってきがちでしょう。ブックスタートの現場でいろいろ説明があっても、親の側がそれをきちんと理解せず、何か教育的なものになってしまう可能性はけっこうあると思います。

 私はブックスタートの取り組みを実地に知っているわけではないので、誤解している部分もたぶんあるでしょう。それでも、ブックスタートで絵本を母親や父親に渡すとき、「絵本を読ませる」のではなく「ふれ合いの時間」が大事ということや、絵本に過剰に教育的な意味を込める必要はないこと、こういうことがちゃんと伝わっているかなあという、そういう疑問だったわけです。

 で、上記のようなことが伝わっていないとしたら、絵本に接するせっかくの機会が、赤ちゃんにとっても、母親や父親にとっても、楽しめないものになるかもしれないと思いました。それが結果として、その後の絵本との付き合い方にネガティヴに影響することもありうるかなと考えたわけです。

 もう一つは、こうしたブックスタートがマタニティ・ブックスタートにまで広がっていったとき、それは出版社等にとって一つの新しい市場になるのだろうと考えました。このことは、もちろんポジティヴな面もあるでしょうが、ネガティヴな面もあると思いました。

 これについては、以前書いた記事、絵本を知る: 『子どもの本~この1年を振り返って~2003年』(その2)で、日本子どもの本研究会絵本研究部の代田知子さんの文章を引用しながら考えたことに関連します。詳細はリンク先を読んでいただければと思いますが、代田さんは、赤ちゃん絵本とブックスタートの現状について、若干の危惧を表されていました。

 私なりに敷衍するなら、ブックスタート運動の高まりとともに赤ちゃん絵本がどんどん出版されるようになったけれども、どこか当の赤ちゃんを置き去りにしてはいないかという心配です。代田さんがふれている例で言うなら、「赤ちゃん絵本」と言いながら実際には赤ちゃんが楽しめないものが多かったり、あるいは、質はともかく値段を安くしてどんどん絵本を出そうとする出版社側の姿勢があったり、ということです。

 こういう側面に注目するなら、マタニティ・ブックスタートの広がりも、いろいろ気を付ける点があると考えたわけです。もちろん、「胎教によい絵本の読み聞かせ」が唱えられたり「胎教におすすめの絵本」が出版されることをそもそもネガティヴに見る必要はないでしょう。結果として、すぐれた絵本にふれる機会が増すなら、それはよいことと思います。

 とはいえ、代田さんが書かれていたのと同様に、マタニティ・ブックスタートの流れにのって出版社がいろいろ新しい商品やサービスを出していったとき、質が十分に確保されるのかどうか、またブックスタートの本来の主旨や理念がきちんと生かされるかどうか、若干、危うい面があるのではないかと疑問に感じたわけです。

 だいぶ長くなってしまいましたが、多少なりとも先日の記事の不十分な点や表現の至らないところを補足できていればと思います。先にも書きましたが、私はブックスタートの取り組みを実地に知っているわけではありません。自分の子どもと一緒に絵本を読むなかで考えたことや感じたことに基づいて書いているにすぎません。たぶん、いろいろ間違いや誤解もあると思いますが、とりあえず記事をアップします。YuzYuz さんの記事にもトラックバックしたいと思います。

マタニティ・ブックスタート

 『朝日新聞』のasahi.com : MYTOWN : 山口の記事「おなかの赤ちゃんに読んで/出産前の母親に絵本」。山口県小野田市の取り組みです。少し引用します。

0歳から絵本を通して言葉と心を育むため、出産後の母親に絵本を贈る「ブックスタート」運動が全国の自治体に広がる中、小野田市は出産前に贈る独自の「マタニティー・ブックスタート」に取り組んでいる。育児で忙しい出産後より、おなかの赤ちゃんにゆっくり読んであげながら出産を迎えてほしいという。

 うーん、どうなんでしょうね、これ。

 いや、たしかに有意義な部分も大いにあると思います。母親が(もちろん父親も)絵本に接する機会がそれだけ早くなるわけですし、それは赤ちゃんが生まれてからの絵本とのつきあい方にもよい影響を及ぼすと言えます。また、母親にとっても父親にとっても、絵本を渡されることで、自分たちが「親」になることをこれまで以上に自覚できるかもしれません。さらに、記事でも書かれていましたが、出産前の方が余裕があるというのも重要な点でしょう。

 とはいえ、生まれてしばらくの赤ちゃんに絵本を読んでも、おそらく赤ちゃんは絵本を受け入れないのではないでしょうか。少し大きくなってからも遊び道具にすることが多いと思います。そもそも絵本が「絵本」として認知されるのは、それなりに条件が整わないと難しい気がします。

 そうだとすれば、親が期待するほどには赤ちゃんが絵本を楽しんでくれないとき、逆に絵本なんていらないということになりはしないか……。考えすぎかもしれませんが、絵本とのかかわり方が阻害されることもありうるように思いました。もちろん、このあたりについては、事前にきちんと伝えておけばよいのでしょうが……。

 あと、この取り組みがある種の方向に進んでいくと、たとえば「胎教によい絵本の読み聞かせ」とか「胎教におすすめの絵本」といったところまで行くかもしれませんね。最近は絵本ブームと言われていますし、もしかすると、どこかの出版社がすでに企画を立てているかも。たぶん出版社にとっては新しい市場になるような気がします。

 まあ、少し考えすぎかな。どんなもんでしょう。

すくすく子育て(NHK教育):絵本との出会い

 NHK教育で日曜の午後6時から放送されている「すくすく子育て」。番組のウェブサイトもあります。1月4日のテーマは「絵本との出会い」でした。テーマがテーマなので「これはちゃんと見たいな」と思い、ビデオに録画。ようやく見ることができました。

 今回は0歳児から赤ちゃんと絵本を楽しもうという主旨で、なかなかおもしろい内容だったのですが、「そんなこと言っていいのか?」と疑問に思うところもありました。

 とりあえず、役に立つ情報から……

 まず、私もはじめて知ったのですが、ブックスタートという取り組みが全国各地でおこなわれているそうです。これは0歳児健診のときに赤ちゃんと保護者に絵本を配布していく運動で、2003年12月現在で全国の計573の自治体がすでに実施しているとのこと。長野県茅野市では、出生届を提出するときに絵本を1冊プレゼントするといった取り組みもされているそうです。

 このブックスタート、もともとは1992年にイギリスのバーミンガムではじまり、2001年から日本でも本格的に取り組みがはじまったとのことです。ブックスタートをサポートする団体として、NPOブックスタート支援センターも2001年に設立されています。このNPOのウェブサイトに詳しい説明があります。

 それから、番組では、言葉がまだ分からない0歳児でも十分絵本を楽しめることがいろいろと説明されていました。読み聞かせのコツや、0歳児におすすめの絵本も紹介されていて、これは役立ちます。

 「すくすく子育て」のウェブサイトにも今回の内容の要約がありますが、おすすめ絵本については掲載されていないので、参考のため、以下に書誌情報を挙げておきます。

  • 神沢利子 文/柳生弦一郎 絵『たまごのあかちゃん』福音館書店、1993年、定価780円
  • 真砂秀朗『リズム』ミキハウス、1990年、定価(本体 826円+税)
  • 谷川俊太郎 作/元永定正 絵『もこ もこもこ』文研出版、1995年、定価(本体 1,243円+税)
  • 林明子『おつきさま こんばんは』福音館書店、1986年、定価735円
  • 中川ひろたか 文/100%Orange 絵『スプーンさん』ブロンズ新社、2003年、定価(本体 850円+税)
  • 中川ひろたか 文/100%Orange 絵『コップちゃん』ブロンズ新社、2003年、定価(本体 850円+税)

 0歳児のおすすめ絵本については、上記のNPOブックスタート支援センターのウェブサイトでもたくさん紹介されていました。

 で、私がこの番組で疑問に思ったことなのですが、「ママが読むとよい本」と「パパが読むとよい本」があると説明していたところです。どうやら声が高いが低いかで読み聞かせをしている赤ちゃんの反応が違うということで、「ママが読むとよい本=楽しい、メルヘンなど」「パパが読むとよい本=恐い、冒険など」とされています。これは、京都大学大学院助教授の正高信男さんの研究だそうで、ゲストの東京大学大学院助教授の秋田喜代美さんがそのように紹介していました。

 たしかに、赤ちゃんの発汗作用など科学的なデータの裏付けがあるようですが、でもなあ、なんかおかしくないですか? 問題になっているのは、声が高いか低いかであって、それは「ママ/パパ」とは関係ないんじゃないかなあ。女性にも声の低い人はいるし、男性にも声の高い人はいるわけで、それを「ママ/パパ」に簡単に割り振っていいんだろうか。男性だろうが女性だろうが、内容に応じて読み聞かせの声の表現を工夫すればいいだけでは? この図式、ちょっと問題ありと思います。

 もちろん、番組としては、「絵本が苦手なパパもぜひ絵本の読み聞かせをして下さいね」という主旨なんでしょうが、それを単純に「ママ/パパ」の役割分担につなげていいんでしょうか?

 男性だって「楽しい、メルヘンなど」の絵本を読んでいいし、女性だって「恐い、冒険など」の絵本を読んでいい。こんな窮屈で不自由な読み聞かせはしたくないし、自分の子どもにもそんなつまらないことを教えたくないので、私としては断固、上記の図式に反対です。絵本の読み聞かせって、もっと自由で楽しいものだと思うのですが……