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エゴン・マチーセン『あおい目のこねこ』

 今回もうちの子どもは、「青い目のこねこ」が「いぬ」の背中につかまって、山を登り降りするところに受けていました。これ以上省略できないというくらいシンプルな画面と繰り返されるめくりのリズムが、おかしさを生んでいると思います。あと、「きいろい目のねこたち」が木の上でがりがりにやせているところにも「すっごいやせてるねえ」。どうやらうちの子どもはこの絵本(絵童話)をだいぶ気に入ったようです。読み終わると「ああ、おもしろかった!」と心底から言っていました。

 ところで、表紙を見てあらためて思ったのですが、このネコ、青い目といっても眼を閉じていても青いんですね。つまり、眼のまわり全体が青。

▼エゴン・マチーセン/瀬田貞二 訳『あおい目のこねこ』福音館書店、1965年

瀬田貞二/山本忠敬『ピー、うみへいく』

 この絵本はもともとは1958年9月に『こどものとも』の1冊として刊行され、その後、2000年に『こどものとも年中向き』として第2刷が発行されたもの。港の小さな遊覧ボート「ピー」が防波堤の向こうの海に出ていく物語。嵐にまきこまれ「やっぱり港のなかがいいな」となる結末は、なかなか現実的です。人によっては夢がないと言われるかもしれません。それはともかく、波の描写が様式化されていて美しいです。

▼瀬田貞二 作/山本忠敬 絵『ピー、うみへいく』「こどものとも年中向き」2000年5月号(通巻170号)、福音館書店、2000年

ユリー・シュルヴィッツ『よあけ』

 山すその湖に訪れる夜明け。繊細な水彩画のタッチに読み聞かせの声も静かになる、そんな絵本です。

 この絵本の魅力はなによりも、夜明けに至る色と光の美しさです。深く静かな夜の様子、うっすらと夜が明けて風景が少しずつ色づいていく様子が、ゆっくりと描かれていきます。くろぐろとした山々、月に青く照らされた湖面、それらが夜明けが近づきだんだんと色を変えていく。その色と光の変化の静謐さ。

 また、紙面構成も工夫されていると思います。夜明けの移り変わりは、四角いページの真ん中に丸く描き出されます。まわりの紙面は白いまま。そして、ついに湖に朝の光が差しこみ「やまとみずうみがみどりになった」ところだけ、2ページすべての紙面を丸ごと使って描写されます。しかも、その数ページ前から、(たとえば映画でカメラが引いていくかのように)湖のほとりにいるおじいさんと孫や湖の上のボートからだんだんと視点を引いていき、山々と湖が一気に緑に染まる様子を広く遠く見せるのです。この紙面構成と色彩の効果にはため息が出ます。

 夜明けの風景のなかに登場する人間は、おじいさんとその孫の2人だけ。父と子じゃなくて、祖父と孫。この取り合わせがまたよい感じです。少し距離があるけどだから逆に居心地のいい関係かなと思います。その2人が湖のほとりの木の下で夜をすごし、夜明けを前にボートでこぎ出していく。2人の会話はとくになくて、おじいさんは静かな笑みを浮かべています。

 そして、もう一つの魅力が訳文の美しさ。たとえば、

つきが いわにてり、
ときに このはをきらめかす。
やまが くろぐろと しずもる。
うごくものがない。

おーるのおと、しぶき、
みおをひいて……
そのとき
やまとみずうみが みどりになった。

 作者紹介によると、ユリー・シュルヴィッツさんは東洋の文芸・美術に造詣が深く、この絵本のモチーフは唐の詩人柳宗元の詩「漁翁」から取られたのだそうです。この訳文は、
「漁翁」の詩も念頭におきながら作られたんじゃないかなと思います。

 原書の刊行は1974年。

▼ユリー・シュルヴィッツ/瀬田貞二 訳『よあけ』福音館書店、1977年