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スティーヴン・ビースティー/メレディス・フーパー『宝さがしの旅』

 これは面白い! 黄金をめぐって時空をかけめぐる物語。数千年、いや数億年?の時間を超え、大陸をまたにかけて、黄金の有為転変が描かれていきます。フィクションの部分もありますが、多くは実在の場所や事実がもとになっています。

 冒頭ページがまずすごい。なにせ太陽系が誕生するところから説き起こされるのです。金という金属が宇宙のはるか彼方からやってきたことが描かれています。このスケールの大きさに度肝を抜かれました。

 そして、古代エジプトで採掘された金がファラオのマスクとなり、それが墓泥棒たちによって盗掘され、その後、かたちを変え、持ち主を変え、数千年の時間を超えて現代に至ります。黄金の数奇な運命は世界史の様々な出来事と織りなされ、まさに波瀾万丈の物語。

 最初は一つの金マスクだった黄金は、人から人へと渡るなかで全部で7つに分かれていき、それぞれ特異な経緯をたどります。様々な人びとが様々な思いを金に託し、金のまわりにたくさんの人生が現れては消えていきます。なんだかめまいを起こしそうなくらいです。と同時に、金をめぐる人間の多様な営みが描写されており、とても興味深い。

 絵もまた素晴らしいです。近景から遠景へと深く広く描き出されるダイナミックな構図に、緻密な描き込み。濃密な画面です。ときには建物を輪切りにしてみせる視覚的な面白さもあります。比較的大きめの造本は、この迫力ある絵によく合っていると思いました。

 また、ページをめくるたびに、人びとの服装が変わり、装飾品が変わり、建築物が変わっていきます。歴史の大きな変化を実感することができます。

 文章量はけっこう多く、地名や固有名も次々と出てくるので、小さな子どもにとっては難しいかもしれません。しかし、絵を見ているだけでも、かなり面白いと思います。巻末には、関連する歴史上の出来事について詳しい説明も付いていました。

 金をめぐって一気に数千年の「旅」を体験できるこの絵本、うちの子どももけっこう気に入ったようですが、私自身、知的好奇心を刺激されました。子どものみならず大人にとっても、おすすめできると思います。

 原書”GOLD – a Treasure Hunt Through Time”の刊行は2002年。

▼スティーヴン・ビースティー 絵/メレディス・フーパー 文/山田順子 訳『宝さがしの旅』岩波書店、2002年