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スズキコージ『やまのディスコ』

 「しろうまの みねこさん」と「やぎの さんきちくん」は、新しくオープンした山のディスコに出かけます。みんなで楽しく踊っていると、「ライオンの よしおくん」が蜂に刺されてしまい、そのせいで「ライオンの よしおくんの おとうさん」がクワを振り回して駆け込んできて、ディスコはめちゃくちゃに、といったストーリー。

 この絵本のおもしろいところは、まず登場人物のキャラクターです。

 たとえば「このあたりの やまでは いちばんの おしゃれ」「みねこさん」の登場シーン。体重計にのったまま腰に手を当て、前髪にカーラーを巻いて大きな櫛でお手入れしています。真っ赤なミニスカートのワンピースに、これまた真っ赤なハイヒール、なんだかバブル期の「いけいけのお姉さん」を思い出します。

 みんなディスコははじめてなので、バンドが演奏をはじめても突っ立っていると、「みねこさんは エィッと かけごえを かけて、いちばんに」踊り出します。この踊りがまた、吹っ切れています。

 「さんきちくん」も、おしゃれにきめた帽子のファッションに黒のサングラスをかけ、「みねこさん」を後ろに乗せてオートバイをとばします。ディスコで二人があみ出すのが「うぎやまおどり」。うーん、どんな踊りなんだろう?

 「ライオンの よしおくんの おとうさん」もすさまじい暴れっぷりでど迫力だし、ディスコがめちゃくちゃになってもすぐ次の商売のことを考える「くまのたいしょう」もおかしい。激しく踊り狂う他の動物たちもおもしろいです。

 他にも笑えるディテールがいろいろ。このディスコの入場料は「くりのみ 10こ」で、自慢はなんとハチの巣のミラーボール。しかも、まだハチが住んでいるのです。当然、ミラーボールが回り出すと、ディスコのなかをハチが飛び回ります。みんなは腰をかがめて踊るのですが、そのうち「くまのたいしょう」が網をかぶって出てきて、

「みなさーん、あと、くりのみ 5こを はらえば、
はちよけの あみを かして あげましょう、
さあ、さあ、はりきって まいりましょう」

 うーん、なんて商売にがめついんだ。しかも、みんな網をかぶって踊り続けるのです。バンドマンも手に網をつけてギターやベースを演奏し続けます。いやー、すごすぎ。

 絵は、いうまでもなく、どこを切ってもスズキコージ印。派手でどぎつく、実ににぎやかな色彩です。たとえば裏表紙、なんの変哲もない森の描き方一つとっても、色の選び方、木々の輪郭の付け方、木々の並べ方など、あやしい雰囲気がただよってきます。あと、描かれている動物たちの多くは、目がまん丸になっていて、これも一種、異様な感じを増しています。嫌いな人はとことん嫌いかもしれませんが、あやしさとユーモアが結びついていて、私はとても好きです。

 それから、もう一つ注目されるのが、文に使われているフォント。これがまた、手書き風のあやしい感じのフォントなんですね。正確には分かりませんが、このフォント、スズキコージさんの絵本でしか見かけないような気がします。スズキコージさん御用達のフォントなのかもしれません。

▼スズキコージ『やまのディスコ』架空社、1989年