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井浦千砂/井浦俊介『ふしぎな はっぱ』

 いまでは海に沈んでしまった「シャッフル王国」。その王国が栄えていた時代の一人の王子の物語です。心優しき王子でみんなに好かれていたのですが、一つだけ困ったことがありました。それは、髪の毛を洗うのが大嫌いなこと。王様やお后様にいくら言われても、長く伸びた髪の毛を洗おうとしません。そんなある日、王様は、髪の毛を洗わなくても一晩できれいになるという薬を手に入れます。さっそく王子に勧め、王子はそれを頭に振りかけるのですが、朝になってみると、なんと頭から緑色の葉っぱ(!)が何本も生えてきたのです。

 いやー、実にとぼけた物語。このあと王子は、葉っぱを鉢に植えかえて育て、その白い小さな花は国中のみんなの心を和ませたというのがラスト。

 絵は、なんというか真面目で丁寧な印象。古風な静物画、あるいは壁画のようなところがあります。それは、失われた王国という物語の舞台に合っているのですが、髪を洗わないとか、頭に植物が生えてくるといったエピソードとのギャップがあって、なんともいえないおかしさを生んでいます。クスクス笑いたくなってくる感じ。

 というか、言い方を変えると、とても平和なんですね。絵からも伝わってくるのですが、「シャッフル王国」は豊かで栄えており、だからこそ、こんな大らかなお話が成り立つような気がします。そして、その王国がもはや地上に存在しないことも、逆に説得力があります。

 ところで、主人公の王子が一番得意なのは工作。「なにか おもしろいことが あたまに ひらめくと、すぐに じぶんで つくってしまう」そうです。うちの子どもにも少しそんなところがあるのですが(親ばか)、王子が作った「しかけおもちゃ」を興味深そうに見ていました。とはいえ、もちろん(?)、うちの子どもはちゃんと髪は洗うそうです(^^;)。

▼井浦千砂 原案/井浦俊介 文・絵『ふしぎな はっぱ』「こどものとも」1998年1月号(通巻502号)、福音館書店、1998年、[レイアウト:なかのまさたか、原画撮影:神村光洋]