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つちだ のぶこ『でこちゃん』

 今日は4冊。1冊目は『でこちゃん』。つちだのぶこさんは最近は齋藤孝さんが文を担当した『おっと合点承知之助』や『えんにち奇想天外』が有名ですが、この絵本は、つちださんが文も絵も描かれています。

 お母さんに散髪してもらった「てこちゃん」、前髪を切りすぎて「でこちゃん」になってしまって……といったストーリー。表紙がなかなかすごい。「てこちゃん」の顔が大きく描かれ、広い広いおでこに赤字で「でこちゃん」のタイトル。インパクトがあります。

▼つちだ のぶこ『でこちゃん』PHP研究所、2000年

つちだのぶこ『でこちゃん』

 片山健さんとならんで、私の好きな絵本作家が、つちだのぶこさんです。この方は、まだ若くて、そんなにたくさん絵本を描いていないのですが、どの絵本も(私にとっては)ほとんど、はずれなし。日本経済新聞の土曜日の別刷り「NIKKEIプラス1」の最終面にイラストも描かれています。でも、イラストより、ぜひぜひ絵本を描いてほしい作家さんです。最近は、かの斎藤孝さんが文章を担当して『声にだすことばえほん おっと合点 承知之助』も出されていますが、つちださんが文も絵も描いた絵本の方がよいです。

 この『でこちゃん』はつちださんが文も絵も描かれた一冊。日曜日にお母さんに髪の毛を切ってもらった「てこちゃん」、前髪を切りすぎて「でこちゃん」になってしまって・・・というお話。気に入らなくて、いろいろ悩むのですが、最後は、お姉ちゃんが「おまじない」をしてくれて、幼稚園でもそれが大流行、といったところです。絵はユーモラスでとてもあたたかみがあります。

 この絵本の魅力の一つはなんとなく「なつかしい」ことです。てこちゃんの家族は、おじいちゃん、おとうさん、おかあさん、おにいちゃん、おねえちゃん、そして猫と、三世代同居しかも3人きょうだいという大家族です。この家族の間のやりとりが、あったかくて、なんとなく「なつかしい」。たとえば、サザエさんとか、そんな感じです。

 それから、てこちゃんがおかあさんとお買い物に出かけるのも、食堂やお肉屋さんやお団子屋さん、魚屋さんがならんだ昔ながらの商店街。アーケードなんてなくて、「なつかしい」感じです。かなりにぎわっていて、こんな商店街は、地方だったら、もうほとんど見られないんじゃないかなと思います。

 それから、もう一つ、おもしろいのは、この絵本のディテールです。よーく細部を見てみると、いろいろ発見があります。

 てこちゃんの子ども部屋の本棚をみると、『マニマニのおやすみやさん』とか『カリカリのぼうしやさん』というつちださん自身の絵本のタイトルが見えます。その横にあるのは『やまのかいしゃ』。この『やまのかいしゃ』というのは、片山健さんの絵本の一冊です。そして、本棚の上に一枚の絵が飾ってあるのですが、その署名が「カタヤマ ケン」。さらに、てこちゃんが通っている幼稚園の棚に上には『きつねのテスト』というタイトルの絵本がさりげなく置いてあります。この絵本も、片山健さんが絵を担当した絵本なのです。たぶん、つちださんは片山健さんのファンなんじゃないかなと思います。

 また、文章の文字はふつうの印刷文字なのですが、それ以外に、手書きのせりふがいっぱい。これが、とてもユーモラスで、いい雰囲気を出してます。

 あと、商店街のお店の上では忍者が手裏剣をとばしていたり、おじいちゃんが「フォ フォ」なんて言いながらあやしい人形を操っていたり、子ども部屋の壁にはってあるお習字が「何だってキツネ君」とか、楽しいディテールがいっぱいです。

 幼稚園のイスには、つちださんの絵本『カリカリのぼうしやさん』の主人公、カリカリさんがぬいぐるみで置いてあったりしますし、おじいちゃんの人形の一つも、つちださんの絵本『やまのやまびこ』のなかにちょこっと出てくるキャラクターの一つです。このあたりは、読み聞かせのときにうちの子どもが発見して、私に教えてくれました。

 そんなわけで、いろいろディテールで何度も楽しめるのがこの絵本です。

▼つちだのぶこ『でこちゃん』PHP研究所、2000年