11月27日の日経新聞、土曜日の別刷り「NIKKEIプラス1」11面に載っていた記事。リードを引用します。
「絵本は子供のもの」。そんなふうに思っている人は少なくない。だがその絵本が最近は大人の男性の間にもじわりと広がりつつある。子育てにかかわりたいパパの強い見方として、自らと深く向き合う時間を提供するものとして、絵本が再認識されている。
具体的に取り上げられていたのは、絵本ナビの「パパ’s絵本プロジェクト」のおはなし会、紀伊国屋書店本町店(大阪市)の取り組み、絵本についての著作もある作家の柳田邦男さんのお話、神戸市の吉岡俊介さんらによる中高年男性を対象にした読み聞かせ会です。あと、「手引き」という囲み記事で、「パパ’s絵本プロジェクト」のクリスマススペシャルおはなし会や『幸せの絵本』や柳田邦男さんの本の紹介が載っていました。
記事は紙面全体の半分くらいを占めていて、かなり大きな扱い。しかも、11面は全体が「流行発見」欄で、記事のカテゴリーも「はやり白書」。絵本と男性、あるいは男性による絵本再発見、かなり定着してきたのかもしれませんね。
というか、こういう大きな記事になるほど、まだ珍しいということかな。それでも、記事に取り上げるからにはある程度、広がりを見せているということでしょう。あるいは、日経が記事にするほど、一つのビジネスとして可能性があるということか……なんてね。
すごいなーと思ったのは、紀伊国屋書店本町店。今年の3月から、ビジネス書の隣に絵本を並べたそうで、反応は上々、9月には絵本売り場を約2倍に広げ、絵本(?)の売上高も10月は前年同月実績を85%上回ったそうです。「ビジネス書にプラス一冊の絵本が認知され始めた」という本町店の係長の言葉も載っていました。これは本物ですね。
で、この記事では「絵本の魅力」について次のように書かれていました。
想像力をかき立ててくれる貴重な時間。行きつ戻りつ、自分のペースで時間を刻めるぜいたくさもある。これこそ、日々の仕事に追い立てられ、お金の心配などで心がかれた大人が持つべき心豊かな時間だ。
「心がかれた大人」……。うーむ、ちょっと、どうかなあ。違和感を覚えます。
他にも柳田さんの言葉として「年齢や時間を超えて、子どものころのナイーブで豊かな世界に連れ戻してくれるメディアはほかにはない」という表現もありました。
いや、上記がまったく当たってないとは言いません。でも、それだけじゃないと思うのですが……。というか、絵本=子どもの感性=癒しといったような図式は、少々、類型的すぎるような。
まあでも、記事の末尾に書かれているように、「週末は漫画や携帯メールではなく、絵本を手に取ってみてはいかがだろう」というのは、たしかにそうかもしれません。つまり、(携帯メールはともかく)、漫画や映画や小説に勝るとも劣らない、まったく同水準のすぐれた表現様式・表現ジャンルが絵本じゃないかなと思います。