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竹内通雅さんの「私の生きる道程(みち)」

 BIGLOBEのサイト、BB-WAVEアサヒビールとの提携セクションの過去シリーズに、私の生きる道程(みち)というものがあります。「独自の生き方、夢を持った生き方、人とちょっと変わった生き方をしている人に、彼らの『人生』や『仕事』、『趣味』などについて語ってもらうコーナー」とのこと。このシリーズの第2回で竹内通雅さんが登場していることを偶然、知りました。たぶん3年くらい前のテキストと思います。

 アサヒビールが関係しているためか、お酒の話も出てきて、これはこれで面白かったのですが、絵本についていろいろ興味深い内容が記されています。

 まず、竹内さんが絵本作家としてデビューするに至るまでの経緯。まったく知らなかったのですが、竹内さんはもともと現代美術作家を志しておられ、その後、イラストレーターの仕事をされていたそうです。80年代、いわば売れっ子のイラストレーターとして活躍されたとのこと。バブルがはじけて仕事が激減し、そのあと、39歳のときにはじめての絵本を出版。思いもがけない経緯で絵本の世界に入られたことがうかがえます。

 また、絵本が作家と編集者との共同作業によって生まれることも示唆されていて、興味深い。たとえば『森のアパート』の一部には編集者のアイデアが生かされているそうです。少し引用します。

絵本って、企画から出版までに結構時間をかける。原案を持って行くと編集会議にかけられて、いろいろ直されたりして。直す個所によっては大元から考え直さなきゃという場合もあるしね。その絵本がストーリー性のあるものなのか、フラットな展開のものか、絵画集的なものなのかによっても作り方は違ってくるけど、緻密さがアナーキーの下に隠れているのが絵本なんだ。

 「緻密さがアナーキーの下に隠れている」というのは、なるほどなあと思いました。一見したところ思いのままに自由に描かれているように見えて、実は細部に至るまで考え抜かれた表現であること。そこには、作家のみならず、編集者のアイデアも反映されているし、おそらくは出版社のいろいろな意図も(よい意味でも悪い意味でも)入ってくると言えます。

 それから、絵本の可能性やこれからのことについて。面白いなと思ったのは「絵本の世界を紙の上から空間に広げる」という構想。竹内さんは変わらず現代美術への志向を持っておられ、絵本もまた「現代美術のフィルターを通して」作られているそうです。その延長線上で、「いままでやってきたことをみんな生かして自分のアート作品をつくりたい」とのこと。どんなものになるか、かなり興味をひかれます。もう一つ、竹内さん作曲の絵本のテーマソングも、ぜひ一度、聞いてみたいですね。

 あと、最後の一文が非常に印象的。子どもたちは小学生になると絵本よりテレビゲームの方が楽しくなってしまうことを指摘されたあとで、次のように語られています。

でも絵本の記憶って、頭のどこかに必ず刷り込まれてる。普段は忘れてても、大人になってからも何かのきっかけでふと思い出すことってあるよね。そういうのが絵本のいいとこだなあって思う。イラストは消費物だったけど絵本は作品。いまの自分自身は、なかなか気に入っているよ。

 おそらく、絵本もまた「消費物」であることは確かなのではないかと思います。売られて買われる「商品」であり、とりわけ財布を握る親にとってはそうでしょう。しかし、子どもにとっては、たぶん、ただの「消費物」で終わらないのではないか、「消費物」からはみ出す部分が相当にあるんじゃないかと思います。

 あるいは、子どもと一緒に絵本を読む大人にとっても、そういうところは多分にある気がします。子どもに何度も何度も読んでぼろぼろになった絵本は、もはや「消費物」ではありません。大切な宝物と言っていいと思います。それは、きわめて個人的な記憶と結びつき、他とは決して取り替えることのできない何かです。

 一人ひとりの記憶と分かちがたく結びつき、いわば人生に寄り添うところが、まさに絵本の「作品」性なのかもしれません。

内田麟太郎/竹内通雅『へいき へいき』

 これは面白い! 天下に恐いものなしのオオカミと子分のイタチが入り込んだのは、いろんな恐い「き」が生えている山だったというお話。

 いったいどんな「き」だったのかは、読んでのお楽しみ。かなり「き」ています。ページをめくるたびに、思わず吹き出し、そして、へなへなと脱力してしまう感じ。うちの子どもも、だいぶ、うけていました。

 内田麟太郎さんのテンポのよい軽妙な文はもちろんのこと、竹内通雅さんの絵がまたすごい。一種の言葉遊びをどうやって絵で表現するかがポイントです。力のこもったど迫力の描写。しかも、よーく見ると、ページによってはいろいろ遊びがあって、笑えます。

 一つ面白いなと思ったのは、冒頭に登場する、しゃがれ声。「オオカミ」と「イタチ」は、しゃがれ声のからかいに強がって山に入っていくわけですが、このしゃがれ声が誰の声だったのか、文中に説明はありません。しかし、扉、ラストの3ページ、また奥付に付けられた絵を合わせて考えると、声の主がなんとなく分かる気がします。背後のストーリーが浮かび上がってくるような感じですね。なかなか楽しい趣向です。

 それはともかく、この絵本では、最後の最後に、本当に恐ろしい「き」が登場します。見開き2ページにどどーんと描かれた絵は、ちょっとすごいですよ。もちろん、あくまで絵本の表現なのですが、うちの子どもも、この2ページだけは少し恐かったみたいです。

▼内田麟太郎 文/竹内通雅 絵『へいき へいき』講談社、2005年、[印刷所:日本写真印刷株式会社、製本所:大村製本株式会社]