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経済産業省が「キッズデザイン賞」を創設

 NIKKEI NET、8月24日付けの記事、経産省が「キッズデザイン賞」・安全への配慮表彰。経済産業省が、子どもの安全や発育に配慮した製品や絵本、取り組みなどを表彰する「キッズデザイン賞」を創設するそうです。2007年度に第1回の作品を表彰し、以後、毎年実施とのこと。表彰事業の実際の運営は、「キッズデザイン協会」が行うとあります。

 最近は思いもかけない子どもの事故が起こっていますし、なかなか有意義な取り組みですね。ただ、記事中、一点、気になったのが、具体的な表彰対象として「倫理観をはぐくむ絵本」も想定しているというところ。子どもがケガをしにくいデザインのテーブルやイスはともかく、「倫理観をはぐくむ」ことのどこが「デザイン」に関係するのだろうと疑問に思いました。また、どんな倫理観なのかという点で、少々、あやういものも感じました。

 そこで、関連サイトを検索。

 まず、METI/経済産業省の報道発表のページに当該のプレスリリースがありました。「キッズデザイン賞」の創設について 報道発表(METI/経済産業省)です。PDFファイルで詳しい資料も閲覧できるようになっています。

 ざっと見てみましたが、NIKKEI NET の記事にあるような「倫理観をはぐくむ絵本」なんて記述はどこにも見あたりません。また、表彰対象に「絵本」は明記されておらず、そのかわりに「書籍」が入っています。しかし、これは、「商品デザイン:玩具、遊具、書籍、食品などのプロダクトデザイン」という表彰対象カテゴリーの一例として挙げられています。

 「プロダクトデザイン」ですから、基本的にはモノとしてのデザインと理解するのが自然ですよね。実際、小さな子ども向けの絵本は、紙の厚さや角の処理、使用するインクなど、安全であるために様々に工夫されていることがあります。この意味でのデザインが表彰の対象になるわけで、「倫理観をはぐくむ」といったような直接、内容にかかわってくるものではないと思われます。

 商品デザイン以外にも、建築デザイン、環境デザイン、コミュニケーションデザイン、リサーチデザインが対象になっていますが、いずれも倫理観を問題とするようなものではないでしょう。あえて関連を探すなら、特別賞のテーマ例として、「ジャパンバリューデザイン (日本的価値の提案に優れたもの)」が入っているくらいでしょうか。でも、これも「倫理観」というのは無理がありますね。

 念のため、今回の事業を主催・運営するキッズデザイン協会のサイトも検索してみました。KIDS DESIGN ASSOCIATIONです。サイト内のKIDS DESIGN AWARDにキッズデザイン賞の説明がありましたが、ここも基本的に経済産業省のページと同じ内容になっており、「倫理観をはぐくむ」といったような記述は見あたりませんでした。

 うーむ。NIKKEI NETの記事は何をもとに書かれたのかな? ちょっと謎です。経済産業省の担当者からそのような話を聞いたとか……。あるいは、8月24日に開かれたという「キッズデザイン賞創設シンポジウム」でそういう議論があったのか……。まあ、細かい話しではありますが、ちょっと違和感が残ります。

 それはともかく、上記の関連サイトに資料が掲載されていますが、キッズデザイン賞の受賞作品に付与される「キッズデザインマーク」、非常に斬新ですね。グラフィックデザイナーの佐藤卓さんがデザインされてます。佐藤さんご自身の主旨説明がPDFファイル等で読めますが、「優しく子どもを守る形をつくるのではなく、敢えて危険や不完全さを可視化」したとのこと。

 「子どもの安全安心と健やかな成長発達につながる生活環境の創出を目指したデザイン」として優れていると表彰されたものに対し、「危険や不完全さを可視化」したマークを付けるわけです。かなり大胆。表彰された側がマークの付与を敬遠したりしないかなと要らぬ心配をしてしまいます。

 でも、表彰されたからOKというわけではなく、子どもを取り巻くあらゆる「もの」「こと」を常に問い直し見直す必要があり、その作業に終わりはない……そうした意味で、このマークはたしかにぴったりかもしれません。

 表彰によって安住したりせず、なおいっそう前進し続けること。今回の賞に限らず、一般的に、なんらかの受賞に対するマークのデザインとして考えても、これはとても新しい気がします。