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片山令子/片山健『たのしいふゆごもり』

 久しぶりに『たのしいふゆごもり』。何度読んでも、ニコニコしてくる絵本です。うちの子どもも楽しそう。

 今回思ったのは、この絵本、「こぐま」の成長物語でもあるんだなということ。物語の冒頭、「こぐま」は一人で眠れなかったのですが、最後は「おかあさん」が作ってくれた「ぬいぐみ」と一緒に一人で眠れるようになります。そして、この「ぬいぐるみ」、「こぐま」の小さくなってしまったオーバーをこわして作るんですね。たしかに、オーバーを着た「こぐま」の姿からは、袖や裾など合わなくなっている様子がうかがえます。

 たぶん「おかあさん」は、「こぐま」の成長を喜びながら「ぬいぐみ」を作っていたんじゃないかな。

 うちの子どもも、いまは一人で眠れるのですが、しばらく前までは私や妻にぴたっとくっついて眠っていました。そのときのことを少し思い出しました。

▼片山令子 作/片山健 絵『たのしいふゆごもり』福音館書店、1991年

片山令子/片山健『たのしいふゆごもり』

 傑作が目白押しの片山健さんの絵本のなかでも、(いまのところ)私の一番のお気に入りです。この絵本は、片山健さんの絵はもちろん、片山令子さんの文章もすばらしく、おすすめです。(表紙や裏表紙、奥付ページにいたるまで)すみずみまで、非常によく考えて作り込まれていると思います。

 何がすごいって、まずは絵と文の並べ方。見開きの左側に文章、右側に絵が配置されていて、リズムがよいのです。また、左側のページの文章は、そのまわりをストーリーにかかわるものの絵が囲んでいて、これもきれいです。それから、いくつか見開き2ページまるまる絵のページがあります。文章はありません。これが全体のリズムのアクセントになっています。絵本を開いた一番はじめのページ(最初の扉の前)にも、2ページまるまる秋の森の絵があって、それが最初に目に入ってきます。

 片山健さんの絵は、この絵本では水彩画かと思いますが、色づいた秋の森とあたたかな熊の家が魅力的です。とにかく小熊がかわいい。とくに、だんろを前にして眠っている小熊。それから、熊のお母さん、「はちにさされたって ぜーんぜん へいき」「かわを ざぶり ざぶりと あるいて、おおきなさかなをいっぱい とる」、たくましく、そしてやさしいお母さんです。

 ストーリーは、冬ごもりの準備をしていく様子が、見開き2ページごとに一つ一つ進んでいきます。これもとてもリズミカル。りすの親子、小熊のおじいちゃん、かえるの親子、やまねの親子がそのつど登場します。

 ただ一つ残念(?)なのは、このお話には、小熊のおじいちゃんは出てきますが、お父さんは出てきません。熊の家族は父親がいないのがふつうなのかもしれません。

▼片山令子/片山健『たのしいふゆごもり』福音館書店、1991年