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内田麟太郎/竹内通雅『へいき へいき』

 これは面白い! 天下に恐いものなしのオオカミと子分のイタチが入り込んだのは、いろんな恐い「き」が生えている山だったというお話。

 いったいどんな「き」だったのかは、読んでのお楽しみ。かなり「き」ています。ページをめくるたびに、思わず吹き出し、そして、へなへなと脱力してしまう感じ。うちの子どもも、だいぶ、うけていました。

 内田麟太郎さんのテンポのよい軽妙な文はもちろんのこと、竹内通雅さんの絵がまたすごい。一種の言葉遊びをどうやって絵で表現するかがポイントです。力のこもったど迫力の描写。しかも、よーく見ると、ページによってはいろいろ遊びがあって、笑えます。

 一つ面白いなと思ったのは、冒頭に登場する、しゃがれ声。「オオカミ」と「イタチ」は、しゃがれ声のからかいに強がって山に入っていくわけですが、このしゃがれ声が誰の声だったのか、文中に説明はありません。しかし、扉、ラストの3ページ、また奥付に付けられた絵を合わせて考えると、声の主がなんとなく分かる気がします。背後のストーリーが浮かび上がってくるような感じですね。なかなか楽しい趣向です。

 それはともかく、この絵本では、最後の最後に、本当に恐ろしい「き」が登場します。見開き2ページにどどーんと描かれた絵は、ちょっとすごいですよ。もちろん、あくまで絵本の表現なのですが、うちの子どもも、この2ページだけは少し恐かったみたいです。

▼内田麟太郎 文/竹内通雅 絵『へいき へいき』講談社、2005年、[印刷所:日本写真印刷株式会社、製本所:大村製本株式会社]

内田麟太郎/高畠純『ワニぼうのこいのぼり』

 登場するのはワニの家族。「おとうさん」が「ワニぼう」に鯉のぼりを買ってきます。さっそく庭に揚げてみると、青空を気持ちよさそうに泳ぐ鯉のぼり。あんまりうらやましいので、「おとうさん」はなんと「ワニのぼり」(!)をはじめ、「ワニぼう」と「おかあさん」もそれに加わっていくという物語。

 この「ワニのぼり」、つまりは、鯉のぼりと同じように、口にひもをつけて、それを柱に結わえ、みずから風に吹かれるわけです。うーむ、これはおもしろい!

 もちろん、ワニが風に吹かれて空を泳ぐなんて現実にはありえませんが、なんとも楽しい描写。青い空と白い雲をバックに、緑色のワニが浮かんでいるのです。

 また、子どもの「ワニぼう」より先に「おとうさん」がまず「ワニのぼり」になるのも、よい感じです。というか、もしかすると、日々の仕事に疲れたお父さんこそ、鯉のぼりがうらやましく思えてくるのかもしれませんね(^^;)。

 ところで、5月の空を泳ぐ気持ちよさをこの絵本では、春風の美味しさという実に印象的なフレーズで表しています。なるほどなー。鯉のぼりが口を開けて泳いでいる様子は、たしかに春風をおなかいっぱい味わっているようにも見えますね。春風のさわやかさ、心地よさを、美味しさという味覚で表現する……。突飛なようでいて、でも、とても実感がわきます。

 うちの子どもは、「ワニぼう」たちの「ワニのぼり」にニコニコ。終わりのページで街中の動物たちがそれぞれ「○○のぼり」をしている画面では、指さしながら「あ、ヤギ。こっちはゾウ。ペンギンもいるー! タコのぼりー!」と大受けしていました(^^;)。

▼内田麟太郎 文/高畠純 絵『ワニぼうのこいのぼり』文溪堂、2002年

内田麟太郎/伊藤秀男『ひたひたどんどん』

 天気のよい朝、まちの人たちが空を見上げると、なんと海が空に浮かんでいます。クジラやサメやカメ、魚たち、それに船まで浮かべた海が空中を進んでいく……。そのうち、まちの空は海でおおわれてしまい、地上は大騒ぎ。

 絵は緑と青で描かれた海がなかなかの迫力。どうして海が空に浮かんでいるのか、その理由はラストで明らかになるのですが、あらためてみると、とびらや最初のページにも関連することが描かれているようです。

 それはともかく、うちの子どもといっしょに見つけたのですが、家の屋根の上になんだか不思議な生き物(?)がいます。ネコのようだけど、ちょっと違うなー。

▼内田麟太郎 文/伊藤秀男 絵『ひたひたどんどん』解放出版社、1998年、[ブックデザイン:森本良成]