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今江祥智/長新太『なんだったかな』

 今日は1冊。「なんだったかな?」と動物園ではじめて見た「すてきな どうぶつ」を思い出そうとする絵本。カバでもない、ライオンでもない、ゾウでもない……とあれこれ思案して、最後にやっと思い出します。動物たちの太く黒い輪郭線には、他の色がずらして付加されており、隣り合ったり重なり合ったりした色が不思議な効果を生んでいます。色の付いた半透明のセロファンを重ねたような感じ、あるいはブラウン管の画像がゆれているような感じ。あと、とくに美しいと思ったのは、思い出そうとして目をぎゅっと閉じた画面と、そのあとページをめくって、ようやく思い出した動物がすっくと立っている画面。鮮烈な黒です。
 今江さんの「新版/あとがき」によると、この絵本は、もともと1967年発行。このときは「カラー・ブック」という主旨で、12人の作家と画家がそれぞれの「色」を受け持って物語を考え絵をつけるという企画。今江さんと長さんのコンビは、誰も選ばなかった「黒」をやることになり、長さんはけっこう苦労されたようです。三歳児、四歳児、五歳児向きにという建前で3冊作り、その後、絶版になっていたのが理論社から一冊本として再刊。このとき長さんは絵をすべて新しく描いたそうです。で、それから15年たって、2002年にBL出版から一冊ずつ独立に復刊されることになったとのこと。今回は長さんが表紙をあらたに書き下ろしです。
 うーむ、ロングセラーの一方ですぐに絶版になってしまうという絵本のきびしい出版状況がうかがえます。と同時に、時間がたっても変わらない絵本の強い生命力もまた感じ取れます。
▼今江祥智 文/長新太 絵『なんだったかな』BL出版、2002年