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クリス・ヴァン・オールズバーグ『ゆめのおはなし』

 今日は2冊。主人公の少年「ウォルター」が夢に見た未来の姿、それはかっこいい自分専用の飛行機もロボットも、食べたいものがボタン一つで出てくる機械もない、荒涼とした地球だったという物語。「ウォルター」が眠るベッドはそのまま未来へと飛んでいき、ごみに埋まったまちや薬品工場の巨大な煙突の上、エベレストの頂上に建つホテルのそば、渋滞でまったくクルマが進まない高速道路やスモッグで何も見えないグランドキャニオンに降り立ちます。未来の悲しい景色は文字のない見開き2ページいっぱいに描かれ、めくったあとのページに文章が付いているという作り。ページを戻りながら読んでいきました。ある意味、ディストピアが描かれているわけですが、絵そのものはむしろ静謐で美しいとすら言えます。だからこそ逆に恐ろしい未来が真に迫ってくるかもしれません。結末は一応ハッピーエンドになっています。ただ、ちょっと教育的すぎるかなあ。ディストピアにしても物語の結末にしても、少々類型的というか、少し抵抗を感じます。原書の刊行は1990年。
▼クリス・ヴァン・オールズバーグ/西郷容子 訳『ゆめのおはなし』徳間書店、1994年