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きむら ゆういち/はた こうしろう『ゆらゆらばしのうえで』

 「うさぎ」とそれを追いかける「きつね」は、丸太橋にさしかかります。ところが、大雨で一本の丸太だけになっていた橋は、2匹が乗ったとたんに土手からはずれ、フラフラとシーソーのようにゆれはじめます。「うさぎ」と「きつね」は「ゆらゆらばし」の上で立ち往生。うっかり動いたら2匹とも逆巻く川に落ちてしまい、助かりません。動きの取れない2匹は話をすることしかできず、やがて心を通わせはじめます。

 このストーリー、同じく木村裕一さんが文を担当した『あらしのよるに』とよく似ています。もちろん、『あらしのよるに』のオオカミとヤギは互いの勘違いから友達になるわけですし、細部はぜんぜん違います。とはいえ、本来は食べる/食べられる関係にある2匹が特異な状況のなかで不思議な友情を育んでいくというモチーフはまったく同じです。うちの子どもも、読み聞かせのあと「似てるねえ」と言っていました。

 そういえば、タイトルも少し似てますね。『あらしのよるに』と『ゆらゆらばしのうえで』ですから、同じく「の」をはさんでの助詞止めです。

 それはともかく、この絵本でおもしろいと思ったのは、まずは縦長の造本。

 縦31センチ、横19センチという縦長の紙面がとても効果的に生かされています。「ゆらゆらばし」はほとんどいつも紙面の上方に描かれており、その下の広く白い空間が、橋の高さ・谷の深さを物語っています。

 また、見開き2ページの中央に丸太を支える橋脚が描かれ、左に「きつね」、右に「うさぎ」が配置されています。2匹が動いてバランスが崩れると丸太がシーソーのように上下し、この描写は、2匹が「お互いの重さ」を必要としいわば運命共同体であることを鮮明に表していると思います。

 それから、「ゆらゆらばし」の下の逆巻く川の描写もおもしろいと思いました。「うさぎ」や「きつね」、それから「ゆらゆらばし」は、たとえば切り絵のように輪郭がくっきりと鋭角的に描かれています。これに対し、紙面の一番下に描き出されている川の流れは、とても荒々しいタッチで、色の飛沫が飛び散ったかのような彩色もされています。激しく荒れ狂う川面と水しぶきを感じ取ることができます。

 あと、カバーには、木村裕一さんと秦好史郎さんの写真が載っているのですが、これがお二人の幼稚園・保育園時代のものなのです。かわいい男の子のモノクロ写真です。これもおもしろい趣向ですね。

▼きむら ゆういち 文/はた こうしろう 絵『ゆらゆらばしのうえで』福音館書店、2003年