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「読み聞かせ」と著作権

 asahi.com、5月13日付けの記事、asahi.com:「読み聞かせ」に細かい注文 著作権めぐり作家ら – 暮らし。図書館や幼稚園などで行われる絵本の「読み聞かせ」や「お話会」について、著作権者への許諾の要・不要に関するガイドラインを、児童書四者懇談会が作成したとのこと。児童書四者懇談会に参加しているのは、日本児童出版美術家連盟、日本児童文学者協会、日本児童文芸家協会、日本書籍出版協会児童書部会。

 ガイドラインは、日本書籍出版協会からPDFファイルでダウンロードできます(ただし、ファイルのサイズが2.6Mもあるので、ダウンロードするのに時間がかかります)。

 すでに多くのブログで言及されていますが、どちらかといえばネガティブな反応が多いようです。私も、最初、asahi.com の記事を読んだとき、これはどうかなあと反発を感じました。

 ただ、PDFファイルをダウンロードして読んでみると、部分的にはそんなにおかしな内容ではないと思いました。営利使用の場合には許諾が必要であるという当然の原則をまず挙げているわけで、これはそれほど異論はないでしょう。しかも、観客から1円でも料金を取ったらダメというわけではなく、会場費や交通費、お弁当代、資料代、お菓子・ジュース代を徴集することは認めているわけです。グレーゾーンは残るでしょうから、そのあたりの判断の難しさはあるにせよ、割と妥当な線引きではないかと思います。

 その一方で、かなり大きな問題をはらんでいるのが、非営利であっても原本に少しでも改変を加えるなら、すべて許諾が必要としている点。具体的には10の利用形態が許諾を要するものとして挙げられています。引用します。

  1. 絵本・紙芝居の拡大使用(弱視者用も同じ)
  2. ペープサート
  3. 紙芝居
  4. さわる絵本
  5. 布の絵本
  6. エプロンシアター
  7. パネルシアター
  8. パワーポイント
  9. OHP
  10. その他、いかなる形態においても絵本の絵や文章を変形して使用する場合

 これは少々、杓子定規すぎると思います。なにせ弱視者用に拡大するのもダメ……。なんだかなあ。ここまで規制する必要が本当にあるのかなと疑問に思えます。

 ちょっと考えてみても、ある程度の大きさの会場で絵本の読み聞かせをするとなると、子どもたちに絵本が見えにくいケースが多々あると思います。私も子どもと一緒に図書館の読み聞かせ会に参加することがありますが、近くまで寄らないとよく見えません。小さな判型でも優れた絵本はたくさんありますが、それをそのまま読み聞かせしようとしても、子どもに見えなくては意味がありません。この点からすると、拡大使用(パワーポイントやOHPも含めて)はある程度認められてよいと思うのですが、どうでしょう。

 ペープサートや紙芝居、さわる絵本、等についても、子どもたちに絵本の世界に親しんでもらう一つのやり方と考えれば、ある程度は認められてよいと思います。もちろん、その場合には、出所を明示する必要があるでしょう。

 うがった見方かもしれませんが、「読み聞かせ会」で面白かった絵本を自宅用に購入することもあるでしょうし、絵本作家や出版社の情報を知る契機でもあります。ボランティアで行われている「読み聞かせ会」は、著作者や出版社にとって無料の広告媒体とも言えます。

 また、直接的な利益に結びつかなくても、そもそも「読み聞かせ会」や「お話会」は、子どもたちが絵本と出合う貴重な機会です。絵本の面白さ、楽しさを知るチャンスをもっと大事にしてよいと思うのですが……。

 ガイドラインの1ページの末尾には次のように記されていました。

絵本や児童文学作品の作り手と渡し手が、共に手を携えて作品世界の楽しさを子どもたちの心に届けられるよう、この手引きを活用されることを願っています。

 もちろん、作品の改変を無制限に許すことは決してできません。しかし、「作品世界の楽しさを子どもたちの心に届け」るためには、もう少し配慮があってよいと思います。

絵本の著作権

 以下は、Yahoo! ニュースに出ていました。もともとは共同通信社から発信された記事です。

定番絵本の作者が提訴へ 「ページ構成など酷似」

 ロングセラーの赤ちゃん絵本「いない いない ばあ」(童心社)の作者松谷みよ子さん(78)と瀬川康男さん(71)が、自らが作り出した表現方法を学習研究社(東京都大田区)の絵本で無断で使われ、著作権を侵害されたとして、同社と作者に、計約2100万円の損害賠償などを求める訴訟を25日、東京地裁に起こす。
[以下略]

 二つの絵本の写真(見開き2ページ)も掲載されています。たしかによく似ています。

 著作権の専門的な議論はよく分かりませんが、注目したいのは、模倣された要素の一つとして「見開き2ページを使って動物などが『いない いない』という動作をし、次の2ページで『ばあ』という動作をする」が挙げられている点。ページのつくりと絵の配置がここでは問題になっていると言えます。

 たしかに絵本のばあい、個々の文や絵のみならず、絵本全体をどのように構成していくかにも、作者の独創性と創造性が発揮されていると思います。そのことは、前の記事で紹介した中川素子さんの『絵本は小さな美術館』でも指摘されていました。この意味での著作権も看過されてはいけないのかもしれませんね。