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ルース・スタイルス・ガネット/ルース・タリスマン・ガネット『エルマーと16ぴきのりゅう』

 この間に少しずつ読んでいた「エルマー」シリーズの第三巻、読み終わりました。「どうぶつ島」と「カナリヤ島」の冒険から家に帰った「エルマー」。「りゅう」もまた家族の待つ「そらいろこうげん」に戻るのですが、15匹の家族たちは人間に追いつめられ危機に陥ってしまいます。「エルマー」は助けを求めてきた「りゅう」に再会し、一緒に「そらいろこうげん」に向かう、という物語。

 今回もまた「エルマー」は創意工夫で「りゅう」の家族たちを救い出します。文中では、第一巻や第二巻と同じく、作戦に必要なアイテムがいろいろ細かく描写されていました。これをどう活用するんだろうと読み進めていくと、なかなか手の込んだ、しかも楽しい計略。けっこう緊迫する場面もあり、うちの子どもは集中して聞いていました。

 この描写の細かさ、とくに数字の細かさは、「エルマー」シリーズの特徴の一つですね。第二巻では「エルマー」の食べる「みかん」の数がそのつどカウントされていましたが、第三巻では食べ物に加えて、「りゅう」の家族の数や「エルマー」の持つお金もきちんと計算されています。几帳面というか、救出のための周到な準備とも相まって、ある種の合理性を表しているような印象を持ちました。

 しかし、「エルマー」、やっぱり食べ過ぎのような……。いくら大冒険のあととはいえ、一度にあんなに目玉焼きを食べて大丈夫なんだろうか(^^;)。

 ところで、今回登場する「りゅう」の家族は、なかなかユニーク。数ページにわたって続く挿絵では、「たいそう」の楽しいポーズをとった「りゅう」たち一匹一匹がきちんと描かれています。「たいそうのめいじん」の「りゅう」というのも、おもしろい。うちの子どもは、「りゅう」たちの模様と本文中の説明を照らし合わせていました。楽しい趣向です。

 荒々しいと思われている「りゅう」が実はそうではないこと、人間の都合によって恐そうなイメージが作り上げられているだけであること、このあたりの説明も考えてみれば意味深ですね。当たり前と思われていることがただの思い込みであり、しかもそれは実は誰かの利益となるために捏造されたもの……こういう類の事例は身の回りにたくさんあるかと思います。

 それはともかく、へぇーっと思ったのは、第三巻になってはじめて「りゅう」の名前が明かされること。あらためて気が付いたのですが、たしかに第一巻と第二巻では名前が書かれていませんでした。恥ずかしくて言えなかったのだそうです(^^;)。

 あと、「エルマー」と「りゅう」の友情もなかなか印象的。とくに再会の場面と最後のお別れの場面。文中では実にさらりと描かれているのですが、ともに困難を乗り越えてきた仲間です。その絆が、付けられた挿絵や、またとくに表紙のイラストによく表れているように感じました。

 「エルマー」シリーズ、これでおしまいと思うと少し残念です。うちの子どもも「続きがあるといいのにねえ」と言っていました。「エルマー」と「りゅう」、また脇役の「ねこ」や「りゅう」の家族、まだまだいろんな物語が待っていそうな印象なのです。でも、これでおしまい。

 原書”The Dragons of Blueland”の刊行は1951年。

▼ルース・スタイルス・ガネット 作/ルース・タリスマン・ガネット 絵/渡辺茂男 訳/子どもの本研究会 編『エルマーと16ぴきのりゅう』福音館書店、1965年