月別アーカイブ: 2005年5月

中村翔子/はた こうしろう『しりとりのだいすきなおうさま』

 しりとりが大好きで、何でもしりとりになってないと気が済まない王様の物語。食事も、すべての料理がしりとりの順番で出さないといけないので、家来やコックたちは、てんてこまい。おまけに、料理の最後は、これまた王様の大好きなプリンで終わらないとならないのです。もちろん、しりとりですから、料理の名前が「ん」で終わっているものは(最後のプリンは別として)許されません。たとえば「ラーメン」は御法度。そんな王様に困り果てた家来たちは、一計を案じます。

 この絵本、子どもと一緒にしりとりを確認しながら読んでいきました。表紙や、本文の王様を紹介する最初のページも、よく見ると、描かれたものがちゃんと、しりとりになっています。

 王様の我が儘やそれに振り回される家来たちの様子も、軽快な筆致で描写され、なかなかユーモラス。うちの子どもにも受けていました。

 でも、一つ疑問だったのは、「プリン」の前の料理は何だろう?ということ。うちの子どもと一緒にうんうん考えていたら、妻が一言、「ケチャップ」。おー、さすがー。

 ところが、うちの子ども曰く「ケチャップはそのままでは食べないよ!」。あ、そうだねえ、じゃあ、なんだろう? また考えていると、妻が「ポークチョップ」。おー、これは大丈夫だね。でも、ポークチョップの前の食べ物は何だろう? またまた考えていると、妻が「きりたんぽ」。さすがー。

 「き」が最後に来る食べ物はいろいろありそうなので、これでばっちり。つまり、「プリン」←「ポークチョップ」←「きりたんぽ」ですね。みなであれこれ考えるのは、なかなか楽しいです。ちょっと食い合わせが悪いかな(^^;)。

 あ、いま裏表紙を見ていて気が付いたのですが、「プリン」←「スープ」というのも、いいですね。でも、「す」で終わる料理って何だろう?

▼中村翔子 作/はた こうしろう 絵『しりとりのだいすきなおうさま』鈴木出版、2001年

島田ゆか『ぶーちゃんとおにいちゃん』

 「バムとケロ」「かばんうりのガラゴ」に続く、島田さんの新作です。今回の主人公は、イヌの兄弟、「ぶーちゃん」と「おにいちゃん」。「ぶーちゃん」は「おにいちゃん」が大好きで、いつも「おにいちゃん」のまねばかり。そんな二匹のやりとりが描かれていきます。

 「バムとケロ」や「ガラゴ」のシリーズと比べると、かなり小さめの造本。でも、画面の情報量はこれまでと同様か、あるいはそれ以上かも。画面の端々に、たくさんのサブストーリーが浮かび上がってきます。うちの子どもと一緒に、ページを行きつ戻りつして楽しみました。「あ、こんなところに!」「あ、ここにいる!」「これも違ってる!」……。

 島田さんの他のシリーズに登場するキャラクターもたくさん出てきます。あと、無生物だと思っていたものが、よーく見ると生き物だったり、すみからすみまで楽しめます。変な例えですが、スルメのように噛めば噛むほどに味わえる絵本(^^;)。

 と同時に、この絵本では、兄弟二人の人物像が秀逸。なんだか自分の子どものころを思い出しました。私も兄弟二人なのです。自分の失敗をごまかそうとする「おにいちゃん」の様子など、「あー、こんなことあったなあ」と実感できます。

 うちの子どもも二人ですが、そのうち、こんなふうに、きょうだいだけの世界を作っていくんだろうなと思いました。

▼島田ゆか『ぶーちゃんとおにいちゃん』白泉社、2004年、[装幀:高橋雅之(タカハシデザイン室)]

「こどものとも」創刊50周年記念ブログ、5月下旬スタート

 福音館書店の月刊絵本「こどものとも」が来年3月で600号、創刊50周年を迎えるそうです。それを記念して、福音館書店で記念のウェブログを開設(!)。昨日、配信された福音館書店のメールマガジン「あのねメール通信 2005年5月6日 Vol.42」に案内がありました。

 それによると、ウェブログには、これまでに刊行した「こどものとも」600点と「こどものとも年中向き」200点のバックナンバー全点(!)の表紙と簡単な内容を、1週間に1年分ずつ紹介し、毎回その刊行当時のことを知る方々によるエッセイを掲載。50年ですから、50週、約1年で50年の歴史をたどることになるそうです。5月下旬までにはスタートとのこと。

 これはすごい!! バックナンバー全点ですよ、みなさん! あの名作・傑作から、あの怪作まで、すべての表紙と内容紹介……。いや、本当にすごい試みです。

 エッセイは誰が執筆されるのかな。「こどものとも」50年の歴史ですから、そうそうたるラインナップになることは間違いなしですね。非常に楽しみです。

 ウェブログですから、もちろん、一般の読者の感想やコメントも書き込めるようになるみたいです。これは、ものすごく盛り上がりそうですね。私もぜひぜひ参加したいです。

 一般に企業によるウェブログの活用としても、非常におもしろい事例になるのではないでしょうか。こういう有意義な使い方があるんだという先進的な取り組みとして注目される気がします。

 ともあれ、スタートは5月下旬。まだ先ですが、本当に楽しみに待ちたいと思います。

井上洋介『とぶひ』

 次から次へといろんなものが飛んでいく絵本。ネズミやイヌやナマズといった生き物から、看板人形や銅像や自転車といった無生物まで、羽が生えてひらひらと空に上っていきます。

 とくに可笑しいのが、街の人が手に持つ荷物に羽が生えているところ。この荷物、スーパーのレジ袋か、あるいはゴミの入ったビニール袋のように見えます。それが羽をはばたかせ、人がふわりと浮かんでいるのです。うーむ、すごい。

 一人の男の子が一応、主人公(?)になり、どのページにも登場します。いろんなものが飛んでいる様子を男の子は、ニコニコ楽しそうに見ています。飛んでいる動物たちもうれしそうな表情。

 のびやかな筆致は、一気に上昇するというより、地上数メートルをふわふわ浮かぶような独特の浮遊感。色合いは、黄色や茶色、グレーが基本です。くすんだ彩色が、なんとなく懐かしい雰囲気です。そういえば、登場する人びとの服装も、少し地味で歴史の風合いを感じさせるように思います。

 うちの子どもは、とぶ「ハンバーグ」に吹き出していました(^^;)。紙飛行機が飛ぶ画面には、「紙飛行機は最初から飛ぶよねえ」と突っ込み。

 また、読み終わったあとにはタイトルの「とぶひ」を「とびひ!?」と言い換えて、一人で受けていました。「とびひ」というのは、子どもがよくかかる皮膚炎の一種です。曰く「みんな、とびひになると、おかしいねえ」(^^;)。いやはや、うちの子ども、こういう駄洒落のセンスはたいしたものです(親ばか)。

▼井上洋介『とぶひ』学習研究社、2004年(初出:月刊保育絵本『おはなしブーカ』2003年12月号)、[編集人:遠田潔、企画編集:木村真・宮崎励・井出香代、編集:トムズボックス]