「絵本の読み聞かせ」カテゴリーアーカイブ

絵本の読み聞かせのいろいろなかたち

 子どもたちに向けた集団での絵本の読み聞かせというと、その担い手はやはり女性が中心かと思います。とはいえ、最近は、いろんな取り組みが試みられるようになってきたようです。そこで、ここ数ヶ月に右サイドバーの MyClip でクリップした記事に基づき、そうした試みの幾つかを簡単にまとめてみようと思います(といっても、かなり長文になってしまいました^^;)。

男性による読み聞かせ

 まずは男性による読み聞かせ。近年、とみに注目されてきました。その筆頭はもちろん、絵本ナビ パパ’s絵本プロジェクト。新聞や雑誌などのマスメディアでもさかんに取り上げられていますね。

 なんと長野県には「伊那支部」も発足。北原こどもクリニックの北原文徳さんらによる取り組みです。そのライブレポートもあります。なんか、いいなあ。とても楽しそうです。

 北原さんのウェブサイトでは、絵本についての興味深い考察がおとうさんと読む「絵本」しろくまの不定期日記に掲載されており、こちらもおすすめです。

 えー、少々こっぱずかしいのですが、北原さんのウェブサイトのリンク集では「絵本を読むお父さんなら、「今日の絵本」に訊け!」と、うちの今日の絵本にリンクを張っていただいています。いや、「訊け!」っていうほどの内容がなくて恐縮なのですが、本当にありがたいなあと思っています。この場を借りて、感謝いたします。

 話を元に戻して、男性による読み聞かせですが、陸奥新報に2004年11月21日に掲載された記事男性の読み聞かせ、子供たちを魅了。青森県での取り組みです。

 こちらはパパ’s絵本プロジェクトとはとくに関連はなく、単独の活動のようです。少し記事を引用します。

県内で初となる男性の読み聞かせグループ「お話ちゃんこなべ」(高嶋豊明代表)が二十日、絵本の読み聞かせを弘前市門外二丁目の堀越公民館で行い、児童を引き付けた。これまで読み聞かせといえば主に女性だったが、「男性の包容力のある声で聞くのもいい」と好評だった。

 「お話ちゃんこなべ」のメンバーは、弘前市や青森市に住む男性6人。結成は2004年9月。なかには、絵本を読み聞かせするのが今回はじめてという方もいらしたそうです。もちろん、本番の前には1週間かけて練習をされたとのこと。

 男性による絵本読み聞かせ、徐々に広がってきているようです。

高齢者による読み聞かせ

 続いて、年齢限定、60歳以上の高齢者による読み聞かせ。中日新聞の記事にあったのですが、いまは見ることができないようです。そこで、Google にキャッシュしてあったものから引用します。滋賀県長浜市での取り組みです。

長浜市内の小学校で、60歳以上のメンバーが集まる本の読み聞かせボランティア「ジーバーぽこぽこ」が活動している。子どもたちの読書習慣の支援と、高齢者の健康維持、増進につなげようという一石二鳥の試み。県内では初の取り組みだ。

 記事によると、2004年6月に長浜市の保険センターが高齢者の読み聞かせボランティアを募集。8回にわたり講義や実技を受講し、その後、9月からじっさいの活動をはじめたとのこと。メンバーは17人。かなり人気があるようで、市内の小学校から引っ張りだこだそうです。

 「ジーバーぽこぽこ」という名前の由来は、おじいさんやおばあさんからいろんな話が出てくるという意味。なるほど、おもしろいですね。

 記事の最後に説明があったのですが、高齢者による読み聞かせは、東京都老人総合研究所が健康増進に効果的として提案しているそうです。

 同研究所のサイトを検索してみると、広報誌の老人研NEWSに関連記事を見つけました。No.205 平成16年11月(PDFファイル)の「トピックス シニア読み聞かせボランティアのあゆみ」です。

 この記事によると、すでに1990年代にアメリカで同種のプログラムが実施されており、日本では、同研究所が中心になって、東京都中央区、川崎市多摩区、滋賀県長浜市の3地区でおこなわれているようです。活動開始後6ヶ月ごとにお年寄りのフォローアップ健診をし、お年寄りの心身の健康にとっての意義を評価するとのこと。また、お年寄りの読み聞かせが小学校などの教育現場に対してどんな意義や効果を持っているかも聞き取りを進めていく予定だそうです。かなり本格的な調査研究です。

 そういえば、お年寄りに対する読み聞かせの取り組みもあったと思います。でも、もしかすると、お年寄りがみずから小学校に出向いて絵本を読む方が、お年寄りにとってはよりよいかもしれませんね。

高校生による読み聞かせ

 今度は若い世代の読み聞かせ。岩手日報の2005年1月7日の記事、読書会が結ぶ世代の絆 伊保内高生徒。少し引用します。

今回で25年目を迎えた九戸村の伊保内高(牛崎隆校長、生徒182人)の子ども読書会は6日、村内各地区で始まった。7日までの2日間、生徒60人が村内21会場を回り、児童・幼児に宮沢賢治の童話を読み聞かせたり、手作りの紙芝居を上演して交流を深める。

 今年で25年目! 生徒60人で村内21会場! うーむ、これはすごい。ハンカチ落としなどのゲームもするそうです。参加した子どもたちの声も載っていますが、とても楽しそう。毎年、楽しみにしている子どももいるとか。小さいときに読書会に参加した子が高校生になって今度は読み手として活動していることもあるそうで、これは素晴らしいですね。

 うちの子どもを見ていても思うのですが、異年齢の子どもと遊ぶ機会がとても少ないです。高校生と接する機会などほぼ皆無。また逆に、高校生が幼児や小学生と接することもあまりないのではないでしょうか。そういうなかで、児童や幼児と高校生が交流できる読書会は、非常に有意義なんじゃないかと思います。

 岩手県立伊保内高等学校のサイトもありました。子ども読書会のセクションには詳しい情報が掲載されています。

 見てみると、参加する高校生は男子の方が多いんですね(男子32人・女子20人)。学校の公式の行事ということもあると思います。とはいえ、女子よりもむしろ男子にとって、この取り組みはよい経験になるんじゃないでしょうか。いや、私の高校時代を振り返ってみても分かるのですが、こういう子ども読書会は自分の社会を広げる一つのきっかけになると思います。

 サイトのトップページによると、この子ども読書会は平成16年度の善行青少年表彰を受賞したそうです。この表彰については、青少年育成ホームページ平成15年度善行青少年等表彰についてに説明がありました。

 ただ、Google で検索してみると、伊保内高校は、岩手県の高校再編の対象になっており、存続を求める運動がおこなわれているようです。おそらく少子化の問題が背後にあるのでしょう。当事者ではありませんし細かな事情が分からないので何も言えませんが、これだけ優れた活動に取り組んでいる高校がなくなってしまうのは、非常に惜しいと思います。

共有地としての絵本の読み聞かせ

 今回は、ほんの少しのクリップした記事しか見ていませんが、それでも、読み聞かせにはいろんな可能性があるなあと思いました。

 とくに感じたのは、読み聞かせが双方向的であること。もちろん、読み聞かせは子どもたちのために行われるわけですが、でも、それは子どもたちに対して絵本をただ読んでいくだけではありません。

 男性にせよ、高齢者にせよ、高校生にせよ、読み聞かせを通じて自分たちもまた多くのものを得ていると思います。東京都老人総合研究所ではお年寄りに対する読み聞かせの効果が一つの研究テーマになっていましたし、岩手県の伊保内高校の子ども読書会も高校生自身にとっての教育的意義は大きいでしょう。

 しかも、いずれの取り組みでも、参加した子どもたちもまた、楽しんでいるようです。つまり、読み聞かせをする側の独りよがりではなく、なにより子どもたちにとって魅力的な時間と場所を作れているということ。

 こんなふうに考えてみると、絵本の読み聞かせというのは、いわば共有地のようなものかなあと思いつきました。

 理解が間違っているかもしれませんが、みんなで一緒になって作り上げている空間であり、しかも、そこから誰もが多くのものを得て学んでいる空間。それが絵本の読み聞かせのときに現れてくる空間かなあと。

 いや、私自身は自分の子どもに絵本を読んでいるだけなので、集団での読み聞かせがどのようなものなのかじっさいにはよく分かりません。とはいえ、読む側から聞く側への一方的な情報伝達ではなく、読む側と聞く側が双方向的にともに何かを作って獲得していく場なんじゃないかなと考えました。そして、それは、うちの子どもに絵本を読むときにも当てはまるような気がします。