長新太『にゅーっ する する する』

 これはすごい! 地面のようなものから一本の「手」が「にゅーっ」と突き出て、いろんなものを「する する する」と引きずり込んでいくという物語(?)。文章のほとんどは「にゅーっ」と「する する する」の繰り返しになっています。

 とにかく絵のインパクトが強烈。「手」に捕まったいろんなものが地面(?)にアタマからずぶずぶとはまりこんでいきます。足の先だけが地面(?)から突き出ていたりします。靴が脱げて転がっていたりします。

 いや、これは見ようによっては、明らかににホラーですね。突き出てくる「手」にしても、ぐにゃぐにゃしていて、この世のものとは思えません。地面のように見えるものも、地平線いっぱいにまで広がり、赤オレンジ色をしています。空はピンクと黄色です。ある種、彼岸の景色かもしれません。

 うちの子どもも、ちょっと怖かったようです。読み終わったあとで「読まなければよかったかなー。夢に出てくるかも」なんて言っていました。

 いや、もちろん、長さんの絵本ですから、どことなくユーモラスです。最後のページも、おかしみがあります。面白いような怖いような、なんともいえない魅力のある絵本です。

 ところで、「手」が出てくる地面なんですが、「地面」とは簡単に言えない気がしてきました。もっと柔らかで、なま暖かいもの。泥とか。もしかすると、絵の具かもしれないな。固形ではないです。

 考えてみると、こういう柔らかなものにはまりこむというモチーフは、長さんの他の絵本でも読み取れる気がします。あくまで、なんとなくなんですが……。

▼長新太『にゅーっ する する する』福音館書店、1989年(「年少版こどものとも」としての発行は1983年)、[印刷:大日本印刷、製本:多田製本]

長新太『にゅーっ する する する』」への2件のフィードバック

  1. こんばんは。
    長新太さんの絵本は、やはり絵のインパクトがありますね。
    けっして説明的なものとして存在するのではなく、絵そのものに力がある。
    このインパクトは、きっとおとなよりも子どもにより強烈な印象を与えるようにも思います。あくまでも推測ですが。

  2. 海五郎さん、こんにちは。コメントをありがとうございます。またレスポンスがたいへん遅くなってしまい、すいません。海五郎さんがおっしゃるように、たしかに、長さんの絵は大人より子どもの方がより強く感受する気がしますね。とくに今回の絵はすごみがあって、大人の私から見ても、かなりのインパクトでしたから、うちの子どもにとって強烈だったようです。でも、それも一つの魅力と思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です