スズキコージ『すいしょうだま』

 これは、すごい! 魔法使いの息子が、兄弟の助けを借りて、魔法をかけられたお姫様を救い出すという物語。

 とにかく、ど迫力の絵に圧倒されます。エネルギーに充ち満ちた筆致に、濃密な描き込み。むせかえるほどに充溢する色とかたち。これまでに読んだスズキコージさんの絵本のなかでも、ここまで鮮烈なのは、ちょっとないんじゃないかと思いました。

 物語は、冒頭からとばしています。「魔法使いの女」が登場するのですが、自分の息子たちをちっともかわいがらず、ワシやクジラに変えてしまうのです。これは恐い。

 そして、物語の中ほどに現れる「お姫様」。こちらも強烈!

顔はねずみ色をした、くしゃくしゃのばあさんで
かみの毛をもやしたようないやなにおいを、あたりにまきちらしていた。

付けられている絵は、まさに文章の通り。造形も色合いも、不穏な雰囲気を醸し出しています。もちろん、魔法のせいでこうなっているわけですが、それにしても、「お姫様」のこんな描写、他の絵本ではちょっとお目にかかれないと思います。たぶん、スズキコージさんにしか描けないんじゃないかな。絵本の暗黙のルールを壊していると言えるかもしれません。いや、もちろん、それが素晴らしいと思います。

 さらに、荒ぶる牛との戦いに、真っ赤な火の鳥、潮をぶちまけるクジラと、すさまじい冒険がこれでもかと続きます。

 とにかく熱い画面に押しまくられる感じなのですが、と同時に、そこはかとなくユーモラスなところがあるように思いました。「魔法使いの女」の最後や物語のオチは、なんとなく力が抜けています。

 この絵本は最初、1981年にリブロポートより刊行され、その後、2005年に復刊。復刊ドット・コムに寄せられたリクエスト投票により復刊したそうです。これだけ強烈な絵本ですから、リクエストが集まるのも当然のような気がしました。

▼スズキコージ『すいしょうだま』ブッキング、2005年、[印刷・製本:株式会社シナノ]

スズキコージ『すいしょうだま』」への2件のフィードバック

  1. こんにちは。えほんうるふです。
    「この絵本がスゴイ!」にTBありがとうございました。
    本当にスゴそうな本ですね(笑)。フムフム、原作はグリムなんですね。スズキコージが描くグリム、それだけでもう興味津々です。ぜひ読んでみようと思います。

  2. えほんうるふさん、こんにちは。コメント、ありがとうございます。この絵本、一見の価値ありですよ。絵の迫力が半端じゃないです。あと、グリムが原作であること、書き落としていましたが、これも大事なポイントなんですね。ありがとうございます。

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