五来徹『ティラノサウルス物語』

 タイトルの通り、恐竜のティラノサウルスを扱った絵本。ティラノサウルスというと、恐竜のなかでも、もっともどう猛、凶暴というイメージが強いかと思います。映画や小説でも、どちらかといえば悪役が多いですね。

 この絵本がおもしろいのは、そのティラノサウルスの家族を描いていること。物語のはじまりは、ティラノサウルスの夫婦が巣のなかの卵を守っている場面です。やがて卵から赤ちゃんがかえり、そのうちの一匹の男の子、「ティラン」が主人公。お父さんティラノサウルスやお母さんティラノサウルスが子どもたちのために狩りをしたり、「ティラン」たちが少しずつ狩りの仕方を覚え自立していく様子が描かれていきます。そして、「ティラン」は、メスのティラノサウルスと出会い、やがて自分たちの家族を作っていくという物語。

 全体を通じて、ティラノサウルスのいわば家族愛がモチーフになっており、なかなか新鮮です。冒頭ページの説明によると、ティラノサウルスは、家族で生活した跡も見られ、現在のライオンのような生態系を持っていたと考えられるそうです。なるほどなあ。

 絵は変に擬人化することなく、非常にリアル。ティラノサウルスが家族でたたずんでいる画面は、本当にアフリカのライオンの家族を見ているよう。なんだか微笑ましい感じです。

▼五来徹『ティラノサウルス物語』新風舎、2003年、[編集:鬼沢幸江、デザイン:大竹美由紀]

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