トミー・ウンゲラー『ラシーヌおじさんとふしぎな動物』

 もと税金集めのお役人でいまは悠々自適に生活している「ラシーヌさん」、おいしい梨のなる庭の梨の木が自慢だったのですが、ある日、梨がきれいになくなっています。梨どろぼうをつかまえようと見張っていたところ、出会ったのが「ふしぎな動物」。この絵本では、「ラシーヌさん」とこの「ふしぎな動物」の交流が描かれていきます。

 ちょうど仔牛くらいの大きさ。
 遠くからみると、ボロ毛布の小山のようです。だらっと長い、くつしたみたいな耳が、目がついていそうもない顔の両がわで、パタパタしています。ごわごわのふといたてがみがはえていて、長い鼻を下にたらし、ふうふう息をしています。足は切り株みたいだし、ひざは乗馬ズボンみたいにだぶだぶ、うんともすんともいいません。

 「ふしぎな動物」のあっと驚く正体は物語のラストで明らかになりますが、絵を見るかぎりではとにかく不気味。「ラシーヌさん」は楽しく付き合っているようですが、正直言って、あまり近くにいてほしくないタイプの動物です。でも、それがこの絵本のおもしろさですね。
 あと、よく見ると、画面のあちこちに不穏なものがたくさん散りばめられています。実はスプラッター絵本かも。全体を通じて色遣いもなかなかエグいですし、ずぶずぶと深みにはまりそうなあやしい魅力に満ちています。原書の刊行は1971年。この絵本、おすすめです。
▼トミー・ウンゲラー/たむら りゅういち あそう くみ 訳『ラシーヌおじさんとふしぎな動物』評論社、1985年

トミー・ウンゲラー『ラシーヌおじさんとふしぎな動物』」への3件のフィードバック

  1. はじめまして。この本についてのブログを検索してたどりつきました。
    この絵本でのラシーヌさんの仕事柄その他、不思議が多い絵本なので、ウンゲラーの思想を知りたくて色々調べていました。なかなか情報がないですね。
    相変わらず不思議な世界です。

  2.  はじめまして。echo さん、コメントとトラックバックをありがとうございます。echo さんがご自身のウェブログに書かれている、ラシーヌさんの仕事のこと、まったく気が付きませんでした。たしかに、何か含意がありそうですね。
     不思議な世界というのは、本当にその通りで、とくに細部の描き込みがおもしろく興味深いと思います。あやしく謎に満ちた雰囲気は、ちょっと他にはないですよね。

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