中川素子『絵本は小さな美術館』(その1)

 この本は、「視覚表現性」に着目して絵本を読み解いていく本。「視覚表現性」というと少し難しいですが、要するに絵本のなかの目に見える要素すべてを指しているのではないかと思います。

 より具体的には、表紙や見返しや裏表紙の表現、本文における構成の仕方、色の使い方や形の工夫、文字の大きさや並べ方、絵を描く素材や技法、基材としての紙、といったものが扱われています。

 この本、少し難しいところもありますが、一つ一つの絵本に即して非常に具体的に語られています。カラーの口絵も8ページほどあって、「視覚表現性」の中身もよく理解できます。

 また、中川さんの文章は的確かつ細やかで、それも魅力的です。個々の絵本の「視覚表現」が発している声とメッセージをていねいに聞きとっている、そんな印象を受けました。

 私もそんなにえらそうなことを言えませんが、この本を読んでいて、こんな見方もあるんだなあと新鮮に感じたところがたくさんありました。読んでいくうちに、これまで見過ごしていた絵本の新たな世界がどんどん目の前に広がっていくように感じました。絵本の見方、接し方をあらためて考えるうえでとても有意義で、それは、子どもに絵本を読み聞かせするときも生きてくるように思います。

 サブタイトルとして「形と色を楽しむ絵本47」と付けられていますが、紹介されている絵本は全部で約120冊ほど。なかには海外の絵本もあって、ブックガイドとしても役立ちます。

 筆者の中川素子さんは、文教大学教授で造形美術論が専門のようです。絵本学会の呼びかけ人の一人で理事もつとめられています。本書以外にも、絵本について論じた著作が何冊かあるようなので、機会があったら読んでみたいと思います。

▼中川素子『絵本は小さな美術館』平凡社新書、2003年、定価(本体 880円+税)

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